保護者の受験への向き合い方とは?「保護者ホームルーム」レポート
神山まるごと高専note編集部です。今回は、先日神山町で行われた保護者向けの相談会「保護者ホームルーム」の内容をもとに、受験生の保護者向けのメッセージをお届けします!
サマースクール課題振り返り会内で行われた「保護者ホームルーム」
神山まるごと高専では、受験を検討する子どもたちを対象に、高専生活を疑似体験する5泊6日の「サマースクール」を毎年開催しています。課題として、自身のモノづくりに関する動画課題と小論文課題が求められ、選考に通過した63名が参加します。
6月末に、2024年のサマースクール選考の結果を発表しました。
参加が叶わなかった人もいましたが、本番はまだこれから。入試までの約5ヶ月を有効に使ってもっと成長してほしい。そんな思いを込めて私たちは「サマースクール課題振り返り会」を開いて出題の意図や評価された作品のポイントについて解説し、次回への目標設定などを提案しています。
今年は、サマースクール不合格だった在校生によるトークセッションも行い、夏以降の過ごし方や勉強方法についてもアドバイス。
同日に、保護者向けの相談会「保護者ホームルーム」も実施。
今回の保護者ホームルームは全校生徒84名の保護者へのアンケートを元に企画されたもの。回答数は両親が答えたケースもあり90件となり、熱量の高い回答が続出。これまで聞くことができなかった神山まるごと高専生の保護者たちのリアルな声を多数紹介しました。
今回はその様子をレポート!プレゼンターは事務局長の松坂孝紀です。
新しい入試の形に多数の保護者が不安に
振り返り会では、サマースクール参加者が実際に作った動画や小論文を紹介しました。中学生が作ったとは思えないようなクオリティの高い作品を前に圧倒されたり、自分の子供は大丈夫だろうか?と不安に思われた保護者の方もいらっしゃったようです。
在校生保護者のアンケートで、「神山まるごと高専の受験期間中、親として不安なことはありましたか?」という質問に対しては、半数近くが「とても不安だった」と回答。これまでにはない選考基準に対して不安を抱く保護者の方が多かったことがわかりました。
合格者のうち、サマースクール参加者は半数以下
また「サマースクールやオンラインイベントに参加できなかったら入試に不利に働くのではないか?」という不安に対しては「サマースクールへの参加や、参加中の過ごし方は入試の結果には何の影響もありません」と松坂。
「昨年、サマースクールに参加したのは64人で、そのほとんどが実際の入試に挑みましたが、その中で実際に神山まるごと高専生になったのは18名。入学者のうちサマースクール参加者の割合は42.8%で、実は半数以下なんです」と実際、サマースクールに参加していない人の方が入試に合格している昨年のデータが紹介されました。
マッチング重視の入試に欠かせない”本人の意志”
神山まるごと高専の入試では“マッチング”を重視し、企業の採用活動のように選考を行っています。そのため、確実な対策方法はありません。また、偏差値などに代表される合格の確度を知る手段がないことから、保護者の皆さんが心配する気持ちを拭い去ることはできないかもしれません。「それは子ども本人も同じなんです」と松坂は言います。
「小中学生の時の受験は、おそらく保護者の皆さんの意向の比重が大きいと思います。一方で、大学受験や就職試験は本人が意思決定をすることが多いでしょう。15歳、中学卒業後の進路は、ちょうど保護者と本人の希望のウェイトが半々になるタイミングではないかと私たちは考えています。そこで、皆さんにはお子さんたちがどう思っているか、その上で、本人の意思を聞いてみてほしいんです。
入試は入り口に過ぎません。私たちは、アドミッションポリシーに合う学生たちが最大限学びを深められる環境を用意しています。でも、そこに本人の考えや意志がない限りは、無事に合格したとしても、その後を有意義に過ごすことができないと考えています。
また、入試のプロセスの中で、子どもとのコミュニケーションが増えたと実感している保護者の方もたくさんいらっしゃいます。また、対話を通して子どもの成長に向き合えた方もいらっしゃるようです。子どもはいずれ大人になっていきますが、神山まるごと高専の受験を通して、そのタイミングがぐっと近づいた、という実感を持つ方が多いのかもしれません」と、受験を通じた親子のコミュニケーションについてお伝えしました。
保護者ができるサポートは「まずは聞くこと」
ここで「子どもにどんなサポートをしましたか?」という質問への回答を紹介。子どもたちが主体的に考えて、自分の導き出せるようにさりげなく振る舞った様子が伺えました。
また、「こんな風にサポートしてあげたらよかったと思うことは?」という問いに対しては、子どもの力を信じて見守り、そしてどんな結果も受け入れる姿勢が大切であることが感じられました。
「本人の力を信じることから始まっているコメントが多かったようです。保護者の皆さんには、まずは今日の帰り道で『今日はどんなことを感じた?これからどうしたい?』と聞いてみてほしいです。
また『どんな選択も、私は100%あなたを応援するよ』という言葉も添えてあげてください。そんな関わりがあれば、子どもたちは安心して自分の答えを引き出せるのではないかと思います。初めは、上手く言えなかったり、考えがまとまっていなかったりするかもしれません。それでも最後まで待つことが大切なのではないでしょうか」と、保護者のサポートの姿勢の重要性をお伝えしました。
「指導・支援・応援」の3つの適切な使い分けが成長につながる
保護者の皆さんが子どもたちと向き合うときの参考になればと、「指導・支援・応援」の違いから神山まるごと高専が大切にしているスタンスをご紹介しました。正しい道から外れたときは、元に戻れるようにする“指導”。一人では立ち上がれないときの“支援”。そして、本人のやりたいことに応える”応援”。いずれも必要な場面はありますが、神山まるごと高専が最初にとる姿勢は“応援”なんだ、と松坂は言います。
「私たちは、学生を大人として信じることを大切にしています。これはつまり、学生を意志がある存在として尊重すること、もし失敗しても立ち直って、再び挑戦できる存在だと信じることです。この応援のスタンスを続けると、学生は私たちの想像もできないくらい大きく成長していく。開校してからの1年間、そういった成長をたくさん見てきました」
そして、その成長は入学前から始まるのではないか、と思わせてくれるアンケートの結果があります。「神山まるごと高専の受験を通して、あなたが気が付いたお子様の成長はありましたか?」という問いに対して、81%が「とてもあった」と回答。平均で4.7ポイントという結果でした。
不合格だった学生やその保護者から「入試で成長できたことが、今活きている」と連絡が送られて来ることもある、というエピソードも紹介されました。
入試にも、高専生活にも通底する「β(ベータ)メンタリティ」
最後に、神山まるごと高専を表すのに欠かせない言葉、「βメンタリティ」を紹介しました。β版などのワードでIT業界などでよく使われる言葉で、公開前の開発途中のサンプルなどを指す言葉です。
「私たちの学校では、失敗を恐れる必要はありません。全ては成功までの挑戦の過程だからです。欠点のない完成形を初めから求めるのではなく、未完成のβ版を次から次へと作り出し、あらゆる角度から検証し、想像以上に良くしていく。これこそが私たちが目指すビジョンであり、成長に欠かせない精神性です。
受験では、合否という形でわかりやすい結果が出ます。しかし、チャレンジをして、ぶつかって倒れてまた立ち上がって。その挑戦のプロセスの中に、大人も驚くような多くの成長があるのだと私たちは信じています。合否は縁もありますが、入試を通じたお子さんの成長はお約束できるのではないかと思います」と松坂は語ります。マッチングを大切にするからこそ、神山まるごと高専の入試に挑戦する子どもの保護者の方にも、神山まるごと高専が大切にしている”応援”の考え方を大切にしてほしい。そんな思いが伝わるメッセージでした。
親も、楽しもう。一風変わった入試に挑むチームへのメッセージ
最後に、在校生の保護者から、これから入試に挑む子どもたちの保護者へのメッセージをお届けしました。
神山まるごと高専の入試は、子どもたちだけではなく、保護者にもチャレンジが待ち受けているのかもしれません。合否にかかわらず、今このタイミングで様々な切り口から自分を見つめ直す機会は、きっと子どもたちの成長につながり、やがて自信になるのではないでしょうか。
入試本番まであとわずか。保護者の方にとって、この記事が参考になれば幸いです。