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神山まるごと高専初となる海外研修。行き先とその狙いは?

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。
神山まるごと高専は、4月の開校から5ヶ月目を迎え夏季休暇に入っています。この上期でたくさんのことと出会い、学んだ一期生たち。各々が「モノをつくる力で、コトを起こす人」に向けてあゆみを進めています。

そんな神山まるごと高専では、一期生の中から参加希望者を募り夏の海外研修を実施します。開校時には予定がなかった海外研修を企画する意図とは?

今回、事務局長の松坂と海外研修を担当する丸山に海外研修のきっかけや行うことをインタビューしました。

ーー最初に、海外研修の全体像を教えてください。

丸山:当たり前ですが、2023年4月に開校した本校として最初。第一回目となる海外研修です。日程は9泊11日で、対象は希望する学生全員。8月13日から9月末まで行われる夏休み期間中に実施されます。

研修先は様々に検討を重ねた上で、最終的に「インド」としました。歴史的な建造物も多く、同じアジアながらも日本とは異なる文化を有する。そして人口は世界一になり、スタートアップも多く、経済ともにこれから世界のトップに上り詰めようとしているインドの勢いを、肌で感じ、世界の大きさ、自分のちっぽけさ、だからこそ、学び、経験し続けることの面白さを実感する研修になっています。

丸山咲 海外研修・起業家講師担当
2015年新卒で(株)リクルートキャリア(現:(株)リクルート)に入社。勤務の傍ら慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて日本文化を題材にWell-beingを研究。人事コンサルティングのスタートアップでの経験を経て、2020年に独立。2020年3月より神山まるごと高専に参画。神山町内に移住し、起業家講師・海外研修などのプログラム立ち上げやパートナー連携を中心に担当。

ーーインドに至るまでは、例えばどんな候補が上がっていたんですか?

丸山:そうですね。私たちとしては、今の時代、そして、この広い世界を知る中で、自分と向き合ってほしいなと考えていました。インドに至るまでだと、例えば、アメリカ、中国、台湾、シンガポール、ドバイ、イスラエルなどなど。
色々な国を候補に出し、そこでやることの意味・意義とかを想像しながら理事メンバーや同じく海外研修を担当している英語教員の廣瀬とも議論を続けました。

最終的には、スタートアップに関する知識や情報のインプットに留まらず、不条理な部分も含めた世界の幅の広さ、そこにおける自分の存在についてじっくりと考えられるという点で、インドとしました。
インドが持っている多様性や広さ。画一的な正解を学びに行くのではなく、経済成長の勢いと、その渦中にある混沌とをみて、言葉にならなくてもいいから、何か感じ取ってもらい、そこから、そう思っています。

ーーこの海外研修にはテーマなどはあるんですか?

松坂:私たちはコンセプトと表現していますが、「Quest for Being」という言葉をおいています。

松坂孝紀 事務局長
東京都生まれ。東京大学教育学部を卒業後、人材教育会社に入社。マーケティング、人事、経営企画などを担当した後、2017年に子会社として人事コンサルティング会社を起業。自社の経営を行いながら、コンサルタントとしても活動し、企業や地方自治体の人づくり・組織づくりプロジェクトを多数推進する。2021年より神山まるごと高専の立ち上げに参画。学校教育に新風を吹かせるべく、経営メンバーとして学校づくりに邁進中。

本校の授業の特徴でもあるんですが、いわゆる座学のように知識をインプットしに行くような取り組みはあまり行っておらず、探求型の授業が中心です。
今回の研修も、何かを学ぶ機会というより、自分自身で探求する。その舞台としてインドという国が設定されているようにしています。

「Being」つまり「自分の在り方」を、インドという国で見たり経験したりした中から、探求できたらと考えています。

丸山:学生たちは入学してから5ヶ月の学校生活で、たくさんの新しいことや人と出会ってきました。毎週2名の起業家講師が神山に来る特別授業「Wednesday Night」も、上期で12回。25名の起業家の皆さんと出会い、対話ができましたし、県内で活動するアントレプレナーとも沢山交流することができました。また、授業もおそらく学生がこれまで体験してこなかった内容やスタイルのものを受けたかなと思います。

中学時代には非日常だったこうした体験が日常になってきたこのタイミングで、さらにインドという広い外の世界を見てもらうことで、これまで見えてなかった自分の考えや、輪郭がさらにくっきりと浮かび上がってくるのではないかと考えています。

海外研修というと、学生自身も「何か現地のことを学ぶのかな?」と思ってしまうかもしれないのですが、事務局としてはそこでの出会い・経験をある種のきっかけとして、コンセプトとして掲げている「Quest for Being」の通り、自分の探究をしてほしいなと思います。

ーー少し突っ込んで聞きますが、この「Quest for Being」が「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育むためのポイントとなりますか?

丸山:「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育むための基本設計として神山サークルというものがあります。それを土台に、カリキュラムが組まれていますので、通常の授業でもしっかりと成長していけると思っています。ただ、今回の研修を通じて、この「モノをつくる力で、コトを起こす人」という像が、より広い視野で相対化され、学生それぞれにおいて、自分らしいものであるための機会になるのではないかと、期待しています。

神山サークル

私自身、東京から徳島に移住して、毎日学生と過ごしていますが、日々の授業や課外活動を通して、人との比較の中で学生が焦ってしまう瞬間があったりすると思うんですよね。
私たちの学生時代を振り返ってみても、友達と比べてできていないとか、友達が夢を語っている姿に焦りを感じたりとか、ありましたよね。全寮制で友達が直近にいる本校の学生たちはなおさらそういった瞬間もあるように思います。

この夏のタイミングで、広い世界を見た上で、自分と向き合うことにより残りの4年半が、より自分らしくなる。例えば、限られた友達と合わせるのではなくて、改めて自分のやりたいことに気がつく。世界を見た上で、自分のやりたいことに向けて本当に必要な要素を選定する。そうして得た高い視座で下期からの学生生活を過ごすことができるようになるのではないかと思います。

ーー研修の中での具体的なスケジュールはありますか?

松坂:とにかく濃い9泊11日を過ごしてほしいと思います。基本的には、「自ら学びの機会を掴み取ってほしい」と思います。

前半では、インドのカオスな部分に飛び込んでもらうべくオールドデリーの散策やそこでのインタビューを実施する予定です。また、経済成長著しいインドにおいて、その負の部分でもあるスラム地域も訪問をさせていただきます。現地NGOに協力をいただき、貴重な体験をさせてもらえることになりました。

自分たちで散策のルートを決め、自由にデリーの街を散策してもらうことも考えています。バスに乗って観光ルートを回るだけではなく、肌でインドという国を感じてもらえたら嬉しいです。

また、後半にかけては現地のVCや起業家たち、また世界中から人が集まるインド工科大学をはじめ現地大学生たちと交流をしてもらうことで、インドの経済成長のリアルを体感してもらいます。また同世代交流として、現地の高校生とのディスカッションの場も用意しています。

最終日には、ヨガやメディテーションなどのインドらしい身体性を活かしたリフレクション、学生同士の対話通して、得た体験を言葉に限らず、ありのまま振り返る時間を設けています。

これらを通して、いわゆるスタートアップ人材。モノをつくる力で、コトを起こす人に着実に歩んでいってほしいと思います。

このインドでの滞在の様子は、またレポート的にnoteで報告をしようと思います。ぜひお楽しみにお待ちください。

ーーこの研修を終えた後には、どのような状態に学生たちがなっていたらお二人は嬉しいですか?

丸山:Stay Hungry !という気持ちです。
他者への思いやりや、友達同士の関係性はとても重要です。ただ、本質的に仲間になるというのは、お互いが、目的に向かって一生懸命になり、走っていく中で、助けたり、助けられたりする中での結果ですよね。

私は、社会はとても不条理だと思っていて、でも同時にだからこそ面白い!とも思っています。今回のインド研修は、自分が見たくなかった社会の不条理さや汚い部分も見ることになるかもしれません。自分がどんなフィルターを通して社会を見つめているのかを知り、仲間と共有し、どうしたらそのような社会に貢献できるかを考える最初のきっかけになれば嬉しいなと思います。

もちろん、世界を知る楽しさも存分に味わって欲しいですね!

松坂:一期生の特権として、一緒に学校を作っていくということがあると思います。私たちは「創業メンバー」なんて言い方もしていますが、本当に創業している最中です。

この海外研修にも丸山や廣瀬が聞いた学生の声なんかが反映されていますし、この学校としても最初の海外研修をどういう仕上がりにするかは、学生自身の手によるものも多いかなと思います。研修は「研いで修める」と書きますが、まさに必要なのは研ぐ作業。自ら学びの機会を掴み取るというスタンスで、いまこの時代だからこそ学べること、広い世界をみたからこそ学べることを、たくさん学びきってほしい。研修終了時にすべてが消化できないくらいお腹一杯になって、帰ってきてほしいなと思います。

日常の高専生の風景

ーー発展と混沌の中での「Quest for Being」楽しみなものになりそうですね。ありがとうございました!