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〈モノコト物語〉ロボットも資金調達も組織づくりも、失敗を重ねて達成した国際ロボコン出場「Hanabi」

モノをつくる力でコトを起こす、神山まるごと高専生のリアルな挑戦のストーリーに迫る新企画「モノコト物語」。初回は、2024年4月に世界規模のロボット競技会「FIRST Robotics Competition(以下、FRC)」のハワイ地区大会に出場し、「Rookie Inspiration Award」を受賞した学校公認チーム「Hanabi」に迫ります。

話を聞いたのは、左からロボット班電気担当の名和真結美、運営班リーダーの鈴木結衣、代表・ロボット班・アウトリーチ班の中溪一心。

大会ではロボット作りの技術だけでなく、オフシーズン中の地域へのアウトリーチ活動や資金調達なども審査の対象となるほか、世界各国から集まった出場者と協力するコミュニケーション能力も求められます。仲間を集めて、人の共感を生み、技術を磨く。そんな出場への道のりは神山まるごと高専の「モノを作る力で、コトを起こす人」が持つ起業家精神を養ったことでしょう。学校のリソースを最大限活用して750万円の資金調達に成功し、チームメンバー11人でハワイに旅立った彼らの1年間を振り返りました。

ハワイ地区大会でRookie Inspiration Awardを受賞

全員ロボット未経験者で結成したチーム

―FRC出場のきっかけを教えてください。
一心:昨年の5月末に、FRCに出場している方が社会科の授業で話してくださったことがきっかけです。小さい頃からものづくりが好きで、いつかロボットを作りたいと思っていたので「やるなら今だ!」と出場を決めました。一緒に出たい人を募集して26人が集まりました。

結衣:みんな「お祭りみたいで楽しそう!」って、FRCについてよく知らないまま飛び込んでいった感じです(笑)さっそく、出場に必要そうなロボット班、資金を集める運営班、アウトリーチ班などチーム分けをしてリーダーを決めました。

―チーム分けはどのようにしたのでしょうか?
一心:ロボット作りたい人はみんなロボット班になったよね?

結衣:実は私はロボットをやりたかったんです。でも、高専に入ってきただけあってみんなプログラミングや電気のことに詳しいのだろうと遠慮して運営班に回りました。でも、蓋を開けたら誰もロボットを作ったことがなくて(笑)

真結美:私も最初はロボット面白そうだなと思って入っただけだった! 

―全員ロボット未経験者だったと!
一心:高専に入ってすぐの、何かやりたくてウズウズしてる時期だったのでみんなチャンスに前のめりでしたね。

結衣:そこから、まずはリーダーが集まってFRCについて調べていきました。知識が深まるうちに、ロボットは本格的で、資金調達もアウトリーチも、想像をはるかに越える仕事量だということにようやく気がついたんです。そこで改めて「本気でやるとなったらこれくらい大変だけど、それでもやる?」と26人で再確認して、それでもやりたい13人が一年目のメンバーになりました。

仲間を信じるきっかけになった資金集めのピッチ 

―その後は何に取りかかったのでしょうか?
結衣: まずはイベント登録費$6,000(日本円約97万円)をまかなうために、自分がやりたい課外活動に必要な資金を学校に支援してもらえる制度「チャレンジファンド」に応募しました。夏休み明けにした審査のピッチでHanabiのミッション・ビジョン・バリューを発表したのですが、地域のリソース格差を無くす、などの学校の標語のような模範解答を用意していたんです。

真結美:でもそれは、内容を深く議論せずにみんなで出した意見を組み合わせて形にしたものだったから、誰も覚えてなくてただ読み上げるだけになっていました。

結衣:審査をしていたスタッフに「その言葉、自分たちで本気で思ってないでしょう?」と見抜かれて最初は不採択になったんです。10月末に再チャレンジしてお金をいただくことができました。

一心:そういえば俺、チャレンジファンドがターニングポイントだった!

―そうなんですか?
一心:正直に言うと、ピッチに失敗して出場を諦めようと思っていたんです。当時チーム作りやプロジェクトの進め方がうまくいかずに悩んでいた時期でした。

真結美:進め方が分からなさすぎて全体会議のときずっと謝ってたもんね。

一心:あと、チームメンバーが本当にHanabiをやりたいのかが不安だったんです。言い出しっぺの自分はやりたいけど、他のみんなはどうなんだろうと。だけど、チャレンジファンドで厳しいフィードバックを受けて他のメンバーが「本気で出たいから、もっと頑張ろう!」と改善策を考える姿を見て、自分は何をしていたんだとハッとしました。

フィードバックに反省を重ねた営業活動

―資金調達はいつから始めたのでしょうか? 
結衣:10月ごろから学校のスポンサーや地元の企業を訪問するようになりました。ビジネスマナーも知らなかったですし、訪問できてもどうプレゼンを初めていいのか分からず戸惑いました。同席したスタッフから毎回送られてくる長文のフィードバックで初めて失敗に気づくことも多かったです。

―緊張はしませんでしたか?
結衣:緊張はなかったですが、不安と焦りがありました。私たちが資金を集められなければ隣でロボットの勉強をしているロボット班はチャレンジすらできなくなっちゃいますから。最初の協賛がなかなかいただけなくて、ミーティングでは重い空気が流れていました。

しかも、一社目の協賛をいただけたのが営業チーム以外のメンバーだったんです。営業チームとして頑張るべきところを他の班に頼ってしまって、嬉しいはずなのに喜びきれなくて。

―プレッシャーですね。
結衣:しんどいけど今更やめるタイミングもないし「他の班がこんなに頑張ってくれているからやるしかない」と半ば後ろ向きになっていました。

真結美:そのころは、金額的なことよりも「運営班のみんな大丈夫かな?」って心配してたよね(笑)

結衣:でも、やっと私が初めて協賛をいただけたときに他のメンバーが自分のことのように喜んでくれて。大げさじゃなく「このために生きてきたのかも!」って思えたんです。それからHanabiが大好きになって前向きに取り組めるようになりました。

―最終的に目標金額を達成したのはいつでしたか?
結衣:学校の口座が閉まるギリギリの2月中旬でした。最後の企業の方のお返事をいただくときは本当にドキドキしましたね。

落ち込んでいても毎日何かしかのミーティングがあったから、隠していても気づかれるんです。その度に励ましてくれました」と結衣。

部品の知識もゼロからスタートしたロボット作り

―そのころ、ロボット班はどんなことをしていたのでしょう?
一心:FRCのルール発表が1月にあり、3月中旬までがハワイ地区大会出場者のロボット製作期間でした。その後送られてきたタイヤ部分の製作キットを組み立ててから、ハード部分の設計に取りかかりました。

それまで少しだけロボットについて勉強していたものの、本格的にロボットを作るのはそこが初めて。ロボコン部の指導経験のあるロボット班のメンターのスタッフに教えてもらって道具や部品を色々と買ってみたものの「これは何?」となっていました(笑)

真結美:分からないことは全部Chat GPTに聞いてたよね。学校がプロアカウントを持ってて良かった!

一心:FRCにはノウハウや知識の共有文化あるので、プログラミングや設計のオープンリソースも活用しました。

真結美:電気回路を作るときも、どう線をつなげたらいいかわからないから、ひとまずつなげてみて、たくさん部品をダメにしながら進めていきました。

完成したロボットに対して「もっと改良したいなぁ」と一心。

一心:モーターが動くまでにめっちゃ時間かかったよね。

結衣:初めて動いたときのこと覚えてる!私たちが作業してたらロボット班が「きたー!」って叫びながら走ってきて。

体育館でロボットを製作する様子

―ロボットができあがったのはいつくらいですか?
真結美:春休みが始まるころに大体が組み上がっていて、少し動くくらいでした。春休みに入ってからは合宿をして調整しました。

―合宿もしたんですね!
真結美:ロボットの組み立ては高専でやって、使われていない結婚式場をお借りして生活の場にして2月中旬から3月末までみっちりFRCの準備をしました。

一心:暖房がなくて、とにかく寒かった(笑)

結衣:ロボット班が製作している間、運営班は渡航準備のほか、みんなの食事を作っていました(笑)

真結美:私は合宿で“ワンチーム”になった実感があるかも。それまで、リーダー以外はどことなくフルコミットできていない感覚があったんですけど、みんなで寝食をともにして遅くまでミーティングしたり、ときには思いっきり遊んだりして、心を許し合えたから全力を尽くせたと思います。

一心:俺は未だに「みんなの時間を使わせてもらっている」っていう感覚があって。でも、合宿の時はFRCのことしかやらないってみんな決めてたから、遠慮せずに集中できたのがよかったです。

真結美:合宿は必要だったよね。学校期間中はテストもあるし他のプロジェクトも動いてるからFRCだけをやれているわけではなかったんです。高専は高校と違って春休みが1ヶ月半と長かったことに助けられました。合宿なしには出場できなかったと思います。

一心・真結美・結衣:あー!また合宿やりたい! 

楽しさと悔しさが混じった大会本番

―ハワイ地区大会はどうでしたか?
一心:とにかく楽しかったです。大好きなロボットをずっと触れるし、現地で他のチームと交流できました。形式上は敵チームになるのですが、部品が壊れても他のチームが快く分けてくれるなど、みんなで大会を盛り上げるための仲間意識に感動しました。

ハワイ地区大会の様子

結衣:楽しかったけど、悔しかった記憶の方が残っています。試合中、ロボット班がロボットで対戦する傍ら、運営班は審査員に対してチームの強みやこれまでの活動を英語で紹介するんです。英語が思うように話せなかったことや、ロボットが壊れたときにできることが何もないことが悔しくて。もうあんな思いはしたくないです。

―次への課題を持って日本に帰ってきたんですね。では、最後に次の大会に向けての抱負を教えてください。

真結美:前回はお互いの班がやっていることを知らないこともあったので、今年はHanabiみんながワンチームとしてお互いがやっていることをもっと知って本番に向かって行けたらと思っています。

結衣:私は今年は運営班もやりつつロボット班も兼務して、現地でももっと動けるようにしたいです。英語の勉強にも取り掛かりました。

一心:まずは、自分が納得いくロボットを作りたいです。あと、チームメンバー全員が「Hanabiをやってて良かった」と思ってくれるようにしたいです。そうじゃないと、ロボットが無事できても俺は落ち込んじゃうから(笑)チームの目標である「Impact Award」の受賞を達成できるように、リーダーとして何ができるか考え続けます。

Hanabiの情報はこちらで発信中!

2025年の大会に向けて新入生を加えた27人で活動中。応援をよろしくお願いします!

ウェブサイト:https://osato07.github.io/frc_Hanabi_9494/index.html
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次回も様々なモノづくりやコト起こしに挑戦する学生に迫っていきたいと思います。お楽しみに!