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「場」と「機会」をつくり、新たな何かを生み出す。三井不動産の「街づくり」と神山まるごと高専に共通するもの

2023年4月の高専新設に向け、準備を進める神山まるごと高専(仮称・設置構想中)。

この度、三井不動産が寄付企業となり、神山まるごと高専を応援してくださることが決まりました。中学生の皆さんにとっても、「商業施設『ららぽーと』の会社」と言えば身近に感じられるかもしれません。

そこで本記事では、三井不動産常務執行役員の鈴木眞吾さん、神山まるごと高専理事長/Sansan社長の寺田親弘の対談をお届けします。

三井不動産が手掛ける「街づくり」と、神山まるごと高専が進める「学校づくり」。今回の寄付のきっかけは、両者に共通する考え方にありました。

※設置構想中のため、今後内容変更の可能性があります。

三井不動産の使命は「街づくりを通して持続可能な社会を実現する」こと

寺田:今日はよろしくお願いします。鈴木さんは先日、神山町に足を運んでくださいましたね。


鈴木:当日は雪が降っていましたが、雪の神山は自然豊かで素晴らしい場所でした。神山町と、そこに住む皆さんが目標を共有してさまざまなことに取り組んでいる姿が印象的でしたね。

そこに新しく神山まるごと高専ができることで、若い人たちが増え、より刺激が加わるのでしょう。老若男女が交流し合うことによって新しいものが生まれる可能性を、現地で実感できました。

寺田:うれしいです。今度は違う季節に、またぜひお越しください。

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▲三井不動産常務執行役員の鈴木眞吾さん

寺田:改めてですが、三井不動産について、どのような会社なのか教えていただけますか?

鈴木:三井不動産は街づくりを中心に、さまざまな取り組みをしている会社です。オフィスビルや商業施設、住宅、ホテルなどを展開し、人々の暮らしを豊かにすることを目指しています。

最近ではSDGsが注目されていますが、「街づくりを通して持続可能な社会を実現する」ことは当社の使命でもあります。

三井不動産のロゴは「アンドマーク」ですが、都市と自然、経済と文化といった異なる概念の共生共存、多様な価値観との連携といった「アンドマークの精神」の基、社会課題の解決に資する取り組みにも力を入れています。街づくりを通じて、SGDsの活動を具体化させているイメージですね。

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▲三井不動産企業ロゴ

寺田:三井不動産はSDGsが始まる前から、100年後、200年後の未来を見据えて「本当に社会にとって意味ある街づくり」を進めてきたのだろうと思います。

そこへの畏怖の念とリスペクトの気持ちは、学校づくりにチャレンジするようになって以来、改めて強く感じています。

当たり前ですが、スピード感を持って事業を進めるITベンチャーのやり方と、学校づくりはまるで別物です。関係者が多く、さらにそこにさまざまな期待が重なるため、ステークホルダーとの調整は複雑化し、事業の時間軸は全く異なる。「駄目だったらやめよう」というわけにもいきません。

きっと街づくりも、我々が今まさにやっている学校づくりと同じなのだろうと思います。そういう意味で親和性を感じますし、今回パートナーになっていただけたことを心強く思っています。

鈴木:ありがとうございます。

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▲神山まるごと高専(仮称)理事長候補/Sansan株式会社代表取締役社長/CEO 寺田親弘

三井不動産と神山まるごと高専の共通点

寺田:三井不動産が神山まるごと高専に寄付をすることになった経緯についても教えてください。

鈴木:神山まるごと高専がやろうとしていることが、我々が目指すものに合致していると思ったことが大きいですね。

というのも、街づくりは単に建物を建てて終わるものではありません

例えば、三井不動産の本社がある日本橋では、2004年から「日本橋再生計画」が始まりました。産業創造をテーマに掲げ、それによって街のブランド力を高め、街が長く未来を生き続けるためのエンジンにすることを目指し、「新産業創造のための場と機会」を提供しようとしています。

寺田「場」だけでなく、「機会」もセットなのですね。


鈴木:そうです。土地や建物など「場」の提供をして終わりでなく、そこに集うさまざまな人々がインタラクティブに交流をし、何か新しいものを生み出すための「機会」を設けることが必要なのです。

そうやって最初は一つの点に過ぎなかった街づくりのプロジェクトが線になり、面になり、やがて「街づくり」の一つの形ができていく。そして、それはその先何十年、何百年と発展し続けるものです。

神山まるごと高専は、当社のこうした考え方と共通する点が多いと感じました。「場」でもあり「機会」でもある高専から未来に向けた何か新しいものが生み出されるのではないかと期待したのです。

また、起業家ではなく「起業家精神を持った人」を育てようという高専の想いは、新しいものを生み出そうとする当社の「日本橋再生計画」のひとつのテーマである「新産業創造」とまさに一致するものです。これはもう、ぜひご一緒させていただき、少しでもお役に立ちたいと思いました。

寺田:ありがとうございます。会社は「法人」と書くぐらいですから、それぞれにカラーがあります。これは僕の勝手なイメージですが、三井不動産は真摯さを持ちながら、ベンチャー的なチャレンジ精神も合わせ持っていますよね。

鈴木:三井不動産のDNAの一つに、チャレンジ精神は間違いなくありますね。新しいことへの取り組みには寛容であり、それが好きな人間が多い会社だと思ってます。

街づくりは膨大な時間がかかりますから、やっていくうちに当初の構想が陳腐化することも大いにあり得ます。世の中の環境も、人々が求めることもどんどん変わりますので、いわばアジャイル的にトライアルをすることが重要なのです。

組織としても、産業創造や新規事業発掘を目的に2015年からベンチャー投資事業を始めていますし、2020年にはビジネスイノベーション推進部を新設し、全社から幅広く事業アイデアを募集する仕組みも整備しました。

実際に事業化されたものも出てきていますが、これは社内から起業家を輩出するというよりは、従業員一人一人が起業家精神を持ち続けるための仕組みだと私自身は理解をしています。

大企業に所属しながら起業家精神を持つ人はたくさんいると思いますし、その精神を発揮することが本人と組織の双方にとってプラスに働くのであれば、どんどん応援したいですね。


街づくりから「モノをつくる力で、コトを起こす」を学ぶ

寺田街づくりも、学校づくりも、両方「場づくり」ですよね。街にとって教育現場は重要なピースですし、教育現場から見たら街全体がフィールドです。

鈴木:そうですね。実際に今年の8月に竣工する『東京ミッドタウン八重洲』というプロジェクトでは、地元の中央区立城東小学校をビルの一部として組み込もうとしています。街の中の一つの機能として小学校をリニューアルし、未来に向かって成長させていく試みです。

ここでも単に箱を作って終わりではなく、例えばビルに入居する企業や商業テナントと学校で交流する機会を設けるなど、さまざまな取り組みができるのではと思っています。

寺田:神山まるごと高専でも、例えば学生たちが『ワークスタイリング』で多様なビジネスパーソンと交流したりピッチをしたりといった、三井不動産が持つ「場」でつながりを持つような連携の仕方はイメージしやすいですよね。

また、高専が掲げる「モノをつくる力で、コトを起こす」という意味において、街づくりは誰もが理解できるものすごいプロジェクトです。街づくりに関する授業やワークショップは学生にとって意味ある機会になるでしょうし、教える側の三井不動産の皆さんにとっても、面白い機会になるのではと思いました。

鈴木:ぜひやらせていただきたいですね。当社はいろいろな社会課題の解決に取り組んでいますので、そういったテーマについても高専の皆さんの意見を聞かせていただきたいです。先生という立場ではなく、学生の皆さんと一緒に物事を考えていくことが、当社の事業の推進力にもなるのではと期待しています。

そして、将来は神山まるごと高専の卒業生と一緒に、三井不動産で働けるとうれしいですね。

実は当社では技術部門を中心に高専卒業生を採用しています。主にビル管理の現場で活躍してくれていますが、今後は新しい事業の芽を一緒に花開かせるようなチャレンジにも積極的に参画してもらいたいと思っています。

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没頭の「場」と「機会」があれば、未来は拓ける

寺田:少し話は変わりますが、鈴木さんはどのような学生時代を過ごされたのでしょう?差し支えなければ聞いてみたいです。

鈴木:小学校から大学まで、ずっとサッカーをやっていました。とにかくスポーツに明け暮れていましたね。

実は、僕は社会人になってからもサッカーを続けていまして。49歳までずっとやっていました。

体力維持やストレス発散といった効果もありますけど、何よりスポーツを通じて仲間ができたのが一番良かったことですね。そこでできたネットワークから仕事につながったこともあります。

まぁ足をくじいたり、骨折したり、怪我もよくしましたが(笑)

寺田:激しいですね(笑)

鈴木:振り返ると、学生時代は興味のあることに対し、自由に、何の制約もなく没頭できる時期ですよね。何か一つでも夢中になれるものがあって、それに打ち込める環境があれば、未来は拓けていくような気がします。

寺田:僕は没頭できるものがある人の横で、悶々としている学生でした。思春期の欲や野望をぶつける対象を探していたし、そういう意味で、学校づくりは当時の自分へのアンサーでもあります。

スポーツや部活以外にも、例えば学生時代から起業を目指すこともできる。そういう提案が当時の僕にもあればよかったなと思いますし、高専を通じてそんな選択肢を提示したいと思っています。モノをつくるとか、何かを仕掛けるとか、今は若いうちからやれますから。

鈴木:三井不動産としても、私個人としても、若い人たちの「場」と「機会」をつくりたい想いはありますね。そして、神山まるごと高専はその一つになるのだろうと思います。

寺田:今日のお話を伺って、ある投資家の方が「国にとっては教育と起業が全ての核」と言っていたのを思い出しました。そして、それは街づくりにも同じことが言えるのだなと。

街づくりでは想いと志を軸に、柔軟に変化を受け入れ、それを吸収し、力に変えていく必要があるのだと思います。ビジネスや投資の世界ではリターンが重視されますが、それを超えた仕事なのだと感じました。

▲三井不動産オフィスからの眺め

鈴木:そうですね。街づくりにはゴールも、成功も、どちらもありません。常に未来は変わりますから、街づくりは永遠に続いていくものです。

先人たちが地道に築き上げたものが数十年後に花開く世界であり、

僕らも同じように、後輩たちが花を咲かせられる土台作りをする責務があると思っています。これが街づくりの大変さであり、同時に醍醐味でもありますね。

寺田:三井不動産のベースにそういう考え方があるから、神山まるごと高専にも共感していただき、今回のご縁があるのだと改めて思いました。

三井不動産が培ってきたDNAが神山まるごと高専にどうインストールされ、シナジーが生まれるのか。今後がますます楽しみです。

[取材・文・構成] 天野夏海 [撮影]澤圭太


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