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【ソフトバンク】「ICTソリューションと起業家精神」を通して、充実した教育環境の実現を/スカラーシップパートナーインタビュー

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

神山まるごと高専では、学費無償化を目的とした「スカラーシップパートナー」を立ち上げました。

企業からの拠出金および長期契約に基づく寄付などにより、奨学金を安定的に給付する日本初のスキームです。

神山まるごと高専の奨学金基金が完成 全学生を対象に、学費無償の私立学校が実現
https://kamiyama.ac.jp/news/0309-01/

今回は、スカラーシップパートナーの1社であるソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CHROで公益財団法人 孫正義育英財団 業務執行理事も務める青野史寛さんに、神山まるごと高専理事長の寺田親弘が、「ソフトバンクから見た神山まるごと高専の魅力と可能性」について伺いました。

ご自身の背景から『教育』には熱い思いをお持ちの青野さん。「あしなが育成会」副会長も務められています。

また、今回は参画の後押しにもなった、人事本部の 源田 泰之さん、須藤 三佳さん、 杉原 倫子さんもご同席いただきました。

神山まるごと高専に関して10億円の支援をいただいたのは、通信業界では携帯料金値下げなどの影響を受け、簡単ではなかった環境下。そんな中、スカラシップパートナーに参画いただいた背景や想いを皆さんに伺いました。

「未来を創る人材を支援したい」ソフトバンクと神山まるごと高専の
共通の思い

寺田:最初は、Sansanとソフトバンクの接点から宮川社長にアプローチし、お話を聞いてくださったことが始まりでしたね。
※宮川社長…ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CE
その際、ご同席いただいたのが公益財団法人 孫正義育英財団(※以後「財団」)の事務局長でもある源田さんでした。

そこから青野さんに引き継いでくださり、昨年の4月頃にお会いしましたよね。
察するに、当初は青野さんも「とりあえず聞いてみるか」くらいの心持ちだったと思います。

お話してみると、ご自身のご経歴もあってかとても共感いただき「少し前のソフトバンクなら即決したいところですが、今の環境的に簡単ではない…」そんな一言が印象的でした。

青野:当時は、新規でこういった案件を支援するのが難しい状況でした。ところが、宮川からは「話を聞いてみたらどうか?」となっているのが不思議でしたね。

それと同時に源田をはじめとする検討チームが懸命に動いていて「何とかしたい」という気持ちがひしひしと伝わってきたんです。

「彼らをここまで突き動かしているものは何だろう」と、寺田さんにお会いしてみようと思いました。

ソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者) 青野史寛

青野:寺田さんのプレゼンを聞いた印象は強烈に覚えていますね。一言で言うと「やられた!」という感じで。

話を聞き始めて30分後くらいには「これは面白い!すぐにうんとは言えないけど何とかしたい」と心動かされていました。

単に「学校を作りたい」「人材を作る教育機関を作りたい」とかでもなく、「日本の未来を作りたい」という想いを感じました。そこに高専を持っていったのも面白かったですね。

環境的には決して簡単ではなかった。そんなソフトバンクを動かした背景

寺田:純粋に嬉しいですね。そこまでして後押ししてくださった皆さんの想いの起点にあったものは何だったのでしょうか?

杉原:ソフトバンクでは、グループ社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」というものを行っています。

様々な新規事業にチャレンジしていますが、0から1を生み出すのは本当に難しいんです。周囲から反対もあったり、それを貫き通した先にまた逆風があったりします。

神山まるごと高専の話も、社内で同意を得るまでにはさまざまなハードルがありました。

それでも、困難だと言われるほど、ソフトバンク魂というか「数%でも可能性があるのなら突破口があるのでは?」と諦めたくはなかったんです。高専の皆さんといつも一緒に走っているような気持ちでした。

須藤:財団は、ソフトバンクの活動ではなく、孫正義個人の活動として実施しているもので、「未来の世界を作る人材の応援」というビジョンを掲げています。そこに非常に共感するお話もあり、この神山まるごと高専のそのビジョンを一緒に応援できたらなと思いました。

源田:財団の仕事を通して「世の中への貢献やそれに繋がっていく経験は、こんなにも自分の仕事にとってプラスになるんだ」と感じ始めていました。

寺田さんのお話を伺った際、「こんな熱量で未来の世界を作る人材に賭けているなんて、すごい体験になる」そんな確信はありましたね。

左から、杉原さん、須藤さん、源田さん

スカラーシップパートナーとして現地に足を運び感じること

青野:人を動かすのは、かっちりしたプレゼンなどではなく「何だろうこの魂」というようなエネルギーを感じた時なんですよね。

ただ、「10億円なんて余裕はないぞ…」という事業環境下でありながらも、皆で知恵を絞って考え、実現に漕ぎ着けました。

寺田:一人ひとりが動いてくれて、その情熱が形になっていく。正にそれを体現してくださったんですね。感動しました…!そんな想い溢れる皆さんから学生や高専に対して期待することなどはありますか?

青野:そうですね。私たちはスカラーシップパートナーとして、ソフトバンクの通信サービスやICTソリューションの提供を通し、充実した教育環境の実現へ向けて取り組んでいきたいと思っています。

ただ逆に「我々の方が、学生や皆さんから大きなエネルギーをもらうことになるんだろうなあ」という予感があるんです。

だからこそ、可能性を止めずに何かを作ったり成し遂げてほしい。それが世の中を変えていくことに繋がることをやってほしいですね。

「べらぼうに成長してほしい」それ1つしかないです。

源田:これまで日本には、第一線で活躍している大人たちが「教育を通して」子どもたちと対峙して「自分自身の力でモノを作る」ということを、本気で伝えていく環境はなかったと思うんです。

神山まるごと高専という環境で育った子ども達が、10年後、15年後どんな大人になって、どのように世の中を変えていくのかすごく楽しみです。

『孫正義育英財団』とも通ずる、新しい価値観やテクノロジーに触れる環境

青野:神山まるごと高専のテクノロジーとアートの掛け合わせもすごく面白いですよね。

財団にも、エンジニアとして生きながらアートを学んだり様々な子どもたちがいます。皆、自然にダブルメジャー、トリプルメジャーでやっていて、これが本当に大切だと思います。

理系文系など決まりきったプログラムではないからこそ様々な感情や感じ方が生まれる。そこに非常に期待が持てますね。子どもたちの可能性や強みを伸ばせることに繋がると思います。

寺田:そうなんです。デザイン×テクノロジー×起業家精神が三位一体となった学校を作りたかったんです。

僕は起業を軸足に置いていますが、「これからの時代、自分で一通りできないと起業も何も始まらない」と感じていました。

デザイン×テクノロジー×起業家精神というのが、「読み書きそろばん」のように当たり前になっている。それを高専という形で体現しているところは他にはなかったんです。

このプロジェクトを進めていく中で、本当にたくさんの方に共感してもらいました。その中で私たちもパワーをもらい、やりたいことがよりシャープになっていきましたね。

自分の可能性は無限!「迷ったら手を伸ばす」が可能性を作る

寺田:青野さんご自身はどんな学生でしたか?

青野:勤労学生でした。特に15歳の頃は人生最大のピンチと分岐点でしたよ。

私が3歳の時に父親を交通事故で亡くし、「あしなが育英会」にもお世話になりながら姉と母と3人で暮らしていました。また、小学3年生の時に母が倒れたことがきっかけで、中1から牛乳配達、チラシ配り八百屋の配達、中華料理の皿洗いなどをしていました。

そして、15歳の進路相談の時、「勉強きらいでしょ?」と高校進学を母親からは反対されていました。どうにかして高校には行きたくて、中卒で働いた場合の初任給と同等額を家に入れることを条件に納得してもらい、奨学金とアルバイトで生活していました。

ただ、楽しかったですね...!アルバイトでは対人関係能力が鍛えられました。真面目に働いていたので期待もされるようにもなり、「人から信頼されるってこんなに嬉しいことなんだ」と働く原点になりましたね。

寺田:壮絶ではありますが、きっとその中でも青野少年は明るかったんでしょうね…!
常に前向きで誠実であることが小さな成功体験につながり、その延長線上に今の青野さんがあるって本当に凄いなと思います。そんなご経験をされた青野さんから15歳の学生に向けて一言いただけますか?

青野:自分の可能性は無限だと思って何度でもチャレンジしてほしいですね。
チャンスと感じるか、感じないか。手を伸ばすか、伸ばさないか。些細な選択で未来が変わります。「迷ったら手を伸ばす」これが大切。そういうことが自分の可能性をどんどん作っていくのだと思います。

寺田:15歳の頃は特に目の前にあるものは「あるべくしてあるように見える」。その中でも学校は最たるものかもしれませんね。

ただ、よくよく考えてみると「物事の裏側には必ず人がいる」。誰かが思いついて、誰かと出会って共感が広がり形になっている。それがなかったら、これがないんだというものの方が実は多いですよね。

どのみち社会に出るのなら「創り手」になっていかないと面白くない。そういうことをやりたくて学校をやっているんだなと改めて感じました。今日は、ありがとうございます。

[取材・文・構成] 池尻浩子 [撮影] 澤圭太