開校に向けて制作中。「神山まるごと高専」の校歌はどんなものに?
まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。
今回の記事でご紹介するのは「校歌」。
現在制作が進行している神山まるごと高専の校歌は特別なものになりそうです。はたして、どんな校歌が生まれるのか。神山まるごと高専にとっての校歌はどんな役割を担うのか。
発起人でクリエイティブディレクターの山川咲と、起業家講師でもあり校歌プロジェクトにも関わるNEWPEACE代表の高木新平さんによる対談をお届けします。
もう一歩頑張ろうと、背中を押してくれる校歌を
ーー学校には必ず校歌がある印象ですが、神山まるごと高専にとっての校歌とはどんなものなのでしょう?
山川:校歌については昨年の冬くらいから考え始めて、今年3月の「神山まるごと高専 presents 未来の学校FES」あたりから「誰かにつくってもらいたいね」という話をするようになりました。理想としての校歌を考えていくなかで、校歌がこの学校をつくる最後のピースだという気がしてきて。
学校を構成するロジカルな部分はほとんど見えてきたなかで、ものごとをつくる上での「ハート」に寄与してくれるのが歌なんじゃないかと。
校歌というか歌には、カリキュラムのような物理的な部分だけでは届かない、もう一歩頑張ろうと背中を教えてくれるような、人を動かす力がある。それで、ちゃんとつくらなきゃって思い立って、起業家講師としても参加してくれている高木新平くんに相談をしました。
高木:咲ちゃんと学校の方々がいきなり来て、カメラを回しながら校歌の相談をされたんだよね(笑)。
山川:そうだった(笑)。彼とは15年くらい前に出会って、ことあるごとに相談をしている起業家で、学校の相談をしたときにも「学校づくりなんて人生で二度とないような機会だから、講師以外でももっと関わっていきたい」と言ってくれてて。それで、5月にキックオフをして、一度話したところから、今こうして対談に来てもらってる(笑)。
高木:それまで校歌について考えたこともなかったから、そもそも「校歌ってなんだっけ」ということから調べ始めたよね。
山川:もとを辿れば、フランス革命の時に愛国心を讃えるために歌わされたフランス国歌が起源にあるみたいで、アジアではそこそこ一般的なんだけど、アメリカなんかだとあまり存在してないらしくて。小学生の頃から歌わされるような校歌がある国って珍しいみたい。
音楽には、人と人とをつなぐ可能性がある
ーー議論を通じて、神山まるごと高専にとっての校歌はどんなものになるべきだと考えましたか?
高木:今の話にもあるように、校歌ってなかば強制的に歌わされるものだという印象が強くて、個性とは真逆の画一的な世界のものだと感じました。それによって一体感が生まれるという側面もあるかもしれないけど、多様性が当たり前の今の時代においてはやっぱり違和感もあって。
山川:強制力を持つだけの校歌なら必要ないし、本当につくる必要があるのかというところから考えた。
高木:一方で、音楽という存在は人と人をつなぐ可能性を持っている。つながりを共有するために校歌があるのだとしたら、神山まるごと高専においても校歌をつくる意味があるよね、ということを話しました。
山川:文化をつくる歌の力を考えると、私たちの学校にも必要だという結論になったんだよね。
高木:僕の理解では、神山まるごと高専というのは、人生の方向性や道標を見つけて起業をしたり、研究をしたり、何かを突き詰めていくための場所。
卒業してからの人生は分かれていくけど、そこには個性豊かなメンバーがそろっている。それはサマースクールでも感じたし、個性を大切にする学校だからこそ、個をつなげる学校の力が必要だと思った。
そのためには校歌が必要だと思ったんです。
ーー校歌といえば、卒業式や入学式などのシーンで歌われるイメージがあります。校歌が使われる具体的なシーンについては話されましたか?
高木:一般的には体育館で全員並んで歌わされるようなイメージがありますよね。でも、この学校で一番つながりが感じられて、記憶として蓄積されるアツいシーンを想像すると、挑戦者を送り出すときじゃないかなって思って。
それって起業したり、モノをつくったりして、社会に対してチャレンジをしていく瞬間だったり、留学に出たり、シリコンバレーに移ったり、いろんな進路があるとは思うけど、そういう節目に歌われる校歌であってほしいし、そうやって挑戦と応援が循環していくきっかけとしての歌になれたらいいな。
山川:すべては過程であって失敗ではないと思っているから、挑戦すること自体がいいことで、もちろん怖いことだし、うまくいかない可能性もおおいにある。それでもロジックを超えて頑張ってみようと思える。そんな心のなかに何かしらの感情を生み出せるような歌になるといいよね。
高木:そうだね。だから、決められたタイミングじゃなくて、挑戦する瞬間こそそれぞれの儀式になるはずだし、そのために歌われるような校歌であってほしい。
山川:誰かに贈るという考えもベースにあって。たとえば、入学式でも新入生が歌うというよりは、入ってくる人たちを讃えて私たちが歌うとか。でも、メンバーと話すと、たとえば挑戦の前夜に一人で聴くようなこともあるよねと言われて、それって今の新平の話ともすごくリンクしてる気がする。
高木:オリンピック選手が大会の前日に音楽を聴くみたいに、自分の気持ちを高めるために聴くとかね。
山川:起業家だって、みんなそれをやってる気がする。だから、歌うとか聴くとかも含めて、歌と学生のいろんな関係性が生み出せたらいいなあとも思う。
高木:チャレンジするとき、自分を鼓舞するために頭のなかに流れる装置になるはずだよね。挑戦の機会が増えるほど、この校歌を聴く、歌う機会も増える。この学校はきっと挑戦ばかりだから、ずっと聴かれているかもしれないね。もちろん、卒業してからもこの歌を聴くことでもう一歩頑張れるようなこともあるだろうし、そんな生きた校歌になってほしい。
100年、200年、歌い継がれる校歌を作る
ーーそんな校歌を、誰がつくるのでしょうか?
山川:そもそも、学校をつくるということは100年、200年と続く場所をつくるというのが大前提にあると、ここまでやってくるなかで感じていたのね。100年後に私たちはいないけど、この歌はまだ存在している。それはすごいことだし、一過性の流行りのある歌ではないんだと思った。それをつくるに値する人って誰だろう、って。
高木:それに、特定の誰かじゃなくて、みんなが好きである必要があるんだよね。普遍的でなきゃいけないし、時代を超えていく耐久性が必要。
一方で、この学校にはデザイン、エンジニアリングのような未来志向の技術的な部分がある。だから、未来志向を持ちあわせつつ普遍性を持っている、そんな両方をあわせ持つ人なんているのかなって考えました。
エッジーでありながらも、長い時間を耐えうる音楽。そんな概念的なところから、誰につくってほしいかを考えました。
山川:今はまだ、誰につくってもらうのかはまだ発表できないんだけど、新平とのディスカッションの中で、作曲を依頼する人が思い浮かんだときに、「この人だ!この人に、お願いしたい!」って思ったの。
100年続く応援歌を依頼残せるのは、つくり手としてもやりがいのある、きっと素晴らしいことだと思う。
山川:ツテもないし、そんなの不可能だという思いとは裏腹に、やらない理由がないのではないかという確信めいたものもあって。可能性をこじ開けるように、人を介してその方をご紹介をいただいて、長い時間をかけて承諾をいただけました。
みんなの声も聞きながら、進む校歌づくり
ーー校歌制作はすでに動き始めているわけですね。
山川:今は、作詞をしてくれる人も決まって、そのヒアリングを進めています。みんなで考えていること、歌われるシーンや思いを伝えて、すり合わせをしている段階。でも、私たちの一方的な思いだけでつくっても意味がないと思い始めて、今の学生たちが考えていることも聞いた上で、制作をしていきたいと思っています。この学校に来てくれるかもしれない、今の子たちが好きなこと、持っている価値観、どんなものに心揺さぶられるのか。そして、かつて学生だった社会人たちがどんなコトを考えていたのか。そんなことをアンケートを通じてヒアリングしようと思っています。
高木:作詞から始まるんだね。アンケートだけじゃなくて直接いろんな声も聞きたいよね。
山川:そうだね。その声がすべてそのまま校歌に反映されるとは限らないんだけど、いろんなニュアンスや空気をつかみ取れるかなって。
高木:それは、歌以外のところにも影響があるかもしれないしね。
ーーでは最後に、神山まるごと高専における校歌の役割や願いをお聞かせください。
高木:これからも音楽をつくる人、ビジュアルをつくる人など、いろんな方が神山まるごと高専に関わってくるじゃないですか。僕の妄想としては、みんなでこの校歌をサンプリングして、どんどん活用されていくのも面白いんじゃないかと思っています。
僕も普段ロゴとかをつくる際にビジュアル・アイデンティティをつくっていろんな展開をしていくわけだけど、音楽においても基本にある音楽をいろんなところに使っていくことで、校歌のエッセンスがさらに広がっていくといいなと。
みんなでつくってみんなで楽しむ校歌なんて今までなかったと思うし、音楽だからこそ、神山まるごと高専だからこそ、それができるんじゃないかという期待も込めて。
山川:私自身、挑戦するたび歌の力に助けられてきたと、振り返ってみて思う。
絶対に成功するチャレンジなんて世の中に存在しないし、自分がやらなかったところで世界は何も変わらないというか、自分が傷付く可能性すらあるなかで、それでもやってみようと思える。そんな人たちを応援する校歌でありたいと思う。
それは学生のためだけじゃなくて、教員も私たちも、みんなにとっての応援歌となる。学生に閉じたものではないからこそ、いろんな可能性がある。
100年後には「この校歌がなければ今の神山まるごと高専は存在しなかったよね」って言われるくらいのものになる可能性を秘めている。そんな未来を想像しながら、校歌の完成を楽しみにしてもらいたいです。
校歌づくりに、皆さんの声を聞かせてください!
神山まるごと高専では、校歌づくりに皆さんの声を取り入れたいと考えています。
アンケートは今、学生の皆さんと、社会人の皆さんそれぞれに設けています。
「背中を押された歌」や「校歌に思うこと」を、ぜひお聞かせください。
アンケート期限は、2022年11月15日23:59 までとさせていただきます。
ご協力の程、よろしくお願いいたします。