「人間の未来を変える学校」に必要なカルチャーとは

【まるごと高専円卓会議レポート】

まるごとnote(神山まるごと高専(仮称・設置構想中)noteアカウント)編集チームです。

「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

※設置構想中のため、今後内容変更の可能性があります。

2021年6月30日(水)に、オンラインコミュニティLittle Life Lab主宰の鎌田安里紗さん、(株)THE COACH代表のこばかなさん、(株)2100代表の国見昭仁さんを招いて、『まるごと高専円卓会議第5回〜みんなと考える!まるごと高専のカルチャーって?〜』を開催しました。

皆さんが通っていた学校には、どのようなカルチャーがありましたか?

「そもそも意識したことがない」という方が多いのではないかと思いますが、学校生活におけるカルチャーは、多かれ少なかれ、人格形成に影響を与えています。ではそうしたカルチャーは、一体、誰がどのように設計すれば良いのでしょうか。また、そもそも意図的に設計できるものなのでしょうか。

今回は「人間の未来を変える学校」のカルチャーについて、設計する上で大切にすべき考え方と、具体的なアイディアについて語り合いました。

(本記事は、イベント第一部のゲストとの会話内容を中心に記事を作成し、第二部に参加された方々の意見や感想も抜粋して載せています。理想のカルチャーについて、読者の皆さんとも一緒に考えていけたら幸いです。)

ゲストが語る、カルチャーの重要性

クリエイティブディレクター・山川咲(以下、山川)さん:皆さん、こんにちは!神山まるごと高専のクリエイティブディレクターの山川咲です。今日のまるごと高専円卓会議のテーマは「学校のカルチャー」。

私自身の学校生活で、思い出として色濃く残っているものは、授業で習ったこと以上に、先生にかけてもらった言葉や仲間との関わりでした。そうしたカルチャーが人に及ぼす影響はとても大きいと実感しています。

今日は、このテーマを扱うのに相応しい素敵なゲストをお呼びしています。まずは、それぞれ自己紹介をお願いします!

Little Life Lab・鎌田安里紗(以下、鎌田)さん:初めまして、オンラインコミュニティ『Little Life Lab』を運営している鎌田安里紗です。Little Life Labは、服や食などの生活に身近なものの背景にある、ものづくりの魅力や、社会課題を知っていこうというコミュニティです。日常で使っているものが、何から出来ているかって意外と分からないものですよね。「歯ブラシや洗剤の原料ってなんだろう?」とか、そういう些細な疑問を掘り下げることで生まれる、様々な発見を楽しんでいます。

神山まるごと高専は、これから社会を作る人たちを育てていく場。だからこそ、まだ発見されていない課題やスルーされている困りごとを感じて、興味を持てる感性を育てるカルチャーが良いなと思っています。今日はよろしくお願いします!

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THE COACH・こばかな(以下、こばかな)さん:皆さんこんにちは!THE COACH Academyという、コーチングを学ぶオンラインスクールを開催している小林かなです。コーチングというのは、ご存知の方もいるかと思いますが、人が本当にありたい姿を顕在化するために、「問い」をしていくコミュニケーション手法です。最近では『1兆ドルコーチ』という本もダイアモンド社から出版され、話題になっています。

答えがない時代と言われる中では「問い」を作れる人が求められてきます。まさに起業家とは、社会がまだ認識していない価値や課題を「問い」によって可視化していく存在。カルチャー作りにおいても、「問い」が一つのテーマになると思っています。よろしくお願いいたします!

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2100・国見昭仁(以下、国見)さん:初めまして、2100代表の国見です。2100とは、今流行っていることとか、儲けられることではなく、2100年まで残っていてほしい概念や事業、サービスをデザインしていくクリエイティブチームです。神山まるごと高専も2100年まで残るべき学校だと思っているので、この構想がスタートした時から、クリエイティブの領域で関わっています。

僕は新卒で銀行に入行し、5年間銀行員をしていました。なぜ、5年で辞めたかというと、5年以上在籍している先輩たちの顔が同じに見えたからです。良い意味でも悪い意味でも、同じカルチャーの中で5年間過ごすと、人は染まっていきます。5年間、神山まるごと高専で過ごし、未来の社会を作っていく生徒たちにどうなって欲しいかを考える上で、カルチャーはとても大切なトピック。皆さんと一緒に考えられるのが楽しみです。よろしくお願いします。

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制度じゃなくて「仕掛け」でカルチャーを作る


山川さん:内容の濃い自己紹介をありがとうございます(笑)。早速、本題に入っていきましょう。

鎌田さん:皆さんに質問してみたいです。カルチャーってなんとなく、意図的に作るものというより、自然に発生するものだと思うのです。そう考えると、まだない学校のカルチャー作りってどうしたら良いのでしょうか。企業だったら、法人として目指す一つの成果があるから、そこに向けてカルチャーを作ると思いますが、学校は生徒の数だけゴールがある。その中でカルチャーを作っていくのって、少し難易度が高そうに感じるんです。

こばかなさん:確かに、各々のゴールに向かえるカルチャー作りを考えると、学校の運営側が統一して作っていくのか、生徒が主体的に作っていくのかは、大事な観点になりそう。ルールや制度をガチガチに固めてしまうと、生徒の自発性が失われそうですね。

国見さん:これは企業の風土改革などの仕事をしていて、感じることなんですが、よっぽど考えて作らない限り、一度作られた制度は無くならないんです。制度を作るって、生徒たちの目の前に柱を作り、通れる道の選択肢を狭めていくようなことなんですが、その柱が増えれば増えるほど、人の行動は似通ってくる。つまり、制度はある種の制限であって、個性の解放を妨げていく。

ですから、生徒の自発性や可能性を大事にする神山まるごと高専のカルチャー作りにおいては、制度じゃなくて「仕掛け」を作るのが大事だと思います。イメージは、ドラえもんの空き地に出てくる土管ですね。


山川さん:どういうことですか!?(笑)

国見さん:あの土管があるからこそ、ジャイアンがその上で歌を披露するリサイタルを開いたり、雨の日にのび太が雨宿りする物語が生まれてくるでしょう。土管という仕掛けを使って、それぞれのキャラクターがアクションを起こして、お互いに関わりを生んでいく。その繰り返しがカルチャーを作ります。

例えば、僕が神山まるごと高専にあると良いと思っている仕掛けは、焚き火。生徒が夜に焚き火を囲って熱い話をする「焚火部」なんて良さそう。きっと、最初は数人が火にあたりに来る程度ですが、やっているうちに参加者が増えていって。さらに、その周りに釜や鍋を置いておくと、料理をしたい人が勝手に夜食を作り始めるかもしれない。焚き火という仕掛けによって、夜食を食べながら語り合うカルチャーが生まれるかもしれないですよね。

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(寺田、山川、大蔵も学校作りを考える神山での合宿の際には、焚き火を囲んで語り合いました)

「コトを起こす人」に必要なオリジナルな体験

山川さん:現代は、多くの人がスマホを持ち、似たようなアプリを使っていて。日常の体験が似てきていると思うんです。そんな社会の中で、新しいモノを作っていくリーダーや、コトを起こす人になるには、オリジナリティを持った生活体験をどれだけ積み重ねられるかが大事。「5年間、毎日焚き火をして友人と語り合っていました」って体験はすごい貴重だよね(笑)。

こばかなさん:「焚火部」すごい刺さってます(笑)。5年間、40人のクラスで過ごした生徒たちは、一生の仲間になるはず。お互いの違いを理解し合う対話をする経験は、将来起業する際に生きてくると思います。人を巻き込む活動において避けられない人間関係の課題を、対話で解消できるリーダーは活躍していけそう。

鎌田さん:寮生活で、学びと暮らしの両方を共有できることも、リーダーになる上でプラスに働きそうですね。普通、職場や学校では特定のトピックしか話されない。それぞれの人生の中で感じる本当に気になっていることや困っていることを、わざわざ共有はしません。でも、寮での生活や焚火部の対話を通して、日々の小さな興味や困りごとを話せると、その会話が新しい発見を生み出したり、見えていなかった課題を見つけたりすることにも繋がりそうです。

国見さん:僕は「コトを起こす人」というのは、周りの人を感動させて「この人にかけてみよう」と思わせられる人だと思うんですね。そう思ってもらうには、スキルや知識も大事だけど、何よりも人間として大事なことを知っている必要がある。

例えば、人間は一人ひとり全く違った存在であるということ、大自然との付き合い方、食事を材料から作ってみる経験など、人間としての基本を知っている上で、テクノロジーやデザインを使えることが、求められるリーダー像だと思います。

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(生徒一人一人のオリジナルな体験が紡がれる神山の町)

全員での共通体験と「1人の時間」の両立

寺田さん:これまでの話を聞いて、神山まるごと高専では、「コトを起こす人」になる上でプラスに働くカルチャーを設けながらも、それぞれ個別の体験ができる余白を残すことが大切だなと感じました。多様性と画一性を両立するということですね。どう設計していくのが良さそうでしょうか。

国見さん:僕の解釈では、多様性がある集団とは、個々人がバラバラで関係性や関わりがない集団のことではなく、お互いの違いを面白がり関係し合う集団です。ですから、画一性のある共通体験の時間と、多様性を高める為の、一人ひとりが「違い」を育む時間の両方が必要なんだと思います。

鎌田さん:共通体験を通してお互いへの理解が進んでくると、「相手の事を全部知っている」という勘違いが生まれることってありますよね。すると、お互いの違いが認められなくなったりする。尊重し合う人間関係のためには、ある程度の「知らない」部分は必要なんじゃないかと思うんです。

神山まるごと高専は寮生活ですし、共通体験は多そう。どちらかというと、1人の時間を取ることが重要になりそうですね。

こばかなさん:焚火部みたいに周りの人と関係性を育む時間とともに、瞑想やコーチングなどの自分自身に向き合う時間も作っていくことで、両立出来そうだと思いました。

寺田さん:焚き火とソロキャンプの両方ができるとか(笑)。

山川さん:確かに、1人になる時間ってすごい大切。「コトを起こす人」は、「その物事を成すのは自分しかいない」という、覚悟やある種の諦めを受け入れている人だと思います。全体に共通するものがありつつも、自分で何事も決めていくという自覚を育めるように、上手にカルチャーをデザインしていけたら良いなと思いました。今日はみなさんありがとうございました!

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第二部・参加者の声


イベント第二部では、少人数のグループに別れ、参加者の皆さんと一緒に「学校のカルチャー」についてディスカッションをしました。

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以下に、内容を一部抜粋して記載しています。第一部を通して生まれた考えやアイディアの種をご覧ください。

◆「焚き火」に対する共感の声を多くいただきました。

・焚き火がいい!火がある空間は、自然と話したくなる。
・あっちこっちに焚き火があると、色んな集団ができて面白そう。
・焚き火のような、リラックスしながら他愛のない話で盛り上がれる場所が欲しい。
・焚き火面白そうだから火器容認されてほしい...。

◆学校側がカルチャーを作ることに関する意見も。

・高校時代は、あえて「軍隊」のような画一性のあるカルチャーを持つ学校を選んだ。頭髪検査や掃除のときに、毎回点呼を取るような環境。自由だとだれやすい自分としては、非常に満足いく学校だった。学校がカルチャーを作るのは悪いことではない。方針をしっかり伝え、学生がそれを理解して入学すれのならば、問題ない。

◆1人の時間や多様性を育む重要性は多くの方が感じているよう。

・高専の寮生活を通して、1人の時間が大切と感じていた。同室の人と話し合って、お互い1人の時間が作れるように工夫した。個室ではないけれど、ある目的のために集中して使える部屋(自習室)などがあると良いかもしれない。悩んだ時にも気軽に相談できる、カウンセラーや寮母さんの存在も、大切な仕掛けの一つでは。
・白昼夢のような時間がアイディアを生み出すのに欠かせない。ずっと課題に取り組むのではなく、1人でぼんやりするような余白の時間は大事だと感じました。

◆高専の特徴を生かしたアイディアもあります。

・教員と学生のコミュニケーション量を意識的に増やせそう。高専+寮生活ということで、通常の高校生よりも、圧倒的に教員と話す時間はある。加えて、1on1セッションなど頻度高く定期的に行うことで、「学生の心の変化」、「キャリアに対する考え」、「現在抱いている興味関心など」を線で追っていける。
・地域にいるおじいちゃん、おばあちゃんたちと関わりを持って欲しい。自分の手で、農作をしたり、ものづくりをしている人たちと触れ合うことで、学生の創造性が育つと思う。
・地域の方との連携がある学校づくりをしてほしい。寮生活を通して、そこに通う学生同士だけでなく、地域の方がメンターとなり、コミュニケーションを図ることが、「まるごと」の意味。

◆現在中学生の参加者の方も、意見を下さいました。

「中学2年生です。学校のモットーに共感しています。個人的には、寮生活を誰かとすることで、プライベートでも気遣いが必要なのはちょっと大変かもしれません。あとは、学校内だけではなく、もっと学校外の文化にも触れられると良いなと思いました。」

神山まるごと高専(仮称)の開校は2023年4月1日。

今後も引き続き皆さんとのオープンな議論を通して、「人間の未来を変える学校」を作っていきたいと思います!


[取材構成編集・文] 水玉綾、佐藤史紹


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