【セコム】ビジョン「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を。」に通ずる神山まるごと高専への想い/スカラーシップパートナーインタビュー
まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。
神山まるごと高専では、学費無償化を目的とした「スカラーシップパートナー」を立ち上げました。
企業からの拠出金および長期契約に基づく寄付により、奨学金を安定的に給付する日本初のスキームです。
神山まるごと高専の奨学金基金が完成 全学生を対象に、学費無償の私立学校が実現
https://kamiyama.ac.jp/news/0309-01/
今回は、セコム株式会社代表取締役社長 尾関 一郎 さんに、神山まるごと高専理事長の寺田親弘が、セコムのビジョン「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を。」に通ずる神山まるごと高専への想いについて伺いました。
取材を通して、AI・IoT・セキュリティロボットなどテクノロジーや先端技術に力を入れるセコム。「デジタルテクノロジー」という点でも神山まるごと高専との親和性をより発見できる機会となりました。
セコムとの、大きなご縁と短期的なご縁で結ばれた繋がり
寺田:思い返せば、昨年の10月にお話させていただいたのが初めてでした。
僕の三井物産時代の先輩でもある、DNX Venturesの倉林さんに尾関さんをご紹介いただいたのがきっかけでしたね。
これまで、色々な大企業のエンタープライズの社長にプレゼンしてきましたが、セコムさんの意思決定スピードは驚くほど最速でした。ほぼほぼ、即断いただきましたよね。
尾関:寺田さんにお越しいただいた3日後が偶然、取締役会だったんですよ。
寺田:お話の途中で「取締役会の日程を確認してきます」と席を立たれ、戻って来られた際に「今週の木曜日でした、かけておきますね」とおっしゃった際、ゾクゾクしたのを覚えています。
偶然の出会いも色々ありましたよね。神山まるごと高専のことをテレビ番組でご覧になっていただいていたり、実は尾関さんご自身が徳島にもご縁があったり。
そして、創業者でもある飯田さんを初め、セコムさんは警備業という産業を興され、サブスクを作ったのはいわばセコムなのではないかと思うほど。
私たちは、一般科目に加え、テクノロジー×デザイン×起業家精神を組み合わせた総合力を柱にしているのですが、「起業家精神」という意味でもとても通ずるものを感じました。
そんな大きな意味でのご縁と、短期的に出会うことができたというご縁で、今回のパートナーシップが実現された。そこから教育のプロジェクトにまで繋がるなんて、巡り合わせだなと感慨深いです。
「日本の将来に対する危機感」からくる教育にかける想い
尾関:もちろんご縁は色々ありましたが、寺田さんの熱量に胸を打たれたんですよ。初めてお話を伺った際、「自分で会社を起こした人のプレゼンは熱量が違うな」と感じました。
もう一つは、僕自身「教育」は本当に大切だと思っているんです。
これからの日本に対して2つの危機感を持っています。一つは人口減少。これは国力が弱まる象徴ですよね。もう一つは、国の借金、財政の問題。国の借金がどんどん増えているにも関わらず、それを支える人口が減ってしまったら、将来的に1人当たりが負担する借金はどうなってしまうのか?この先、日本がどうなってしまうのか、非常に心配しています。
神山まるごと高専では、“既成概念に囚われない教育プログラムを実施する“という印象を受けました。今の日本に必要な、いい意味で尖った人材が輩出されていくことをとても期待しています。
寺田:15歳〜20歳で受けた教育の影響はとても大きいです。
入試の面接を通して学生候補と向き合っていると「意味あること、価値あることをやりたい」という何とも言えない野心みたいなものを皆、持っているんです。
それをぶつけたり、もしくはそのまま表現ができる対象としてこの学校を見つけてくれている。同じような思いを持って集まってきた学生たちなので、試験で長時間のワークショップを行っても、切磋琢磨しながら向き合い、口々に「楽しかった」と話してくれる。今回、あえて全寮制にしているので、そこで生まれる相互作用なども楽しみにしています。
尾関:どのような方々がどんな様子で授業をしているのか、是非見に行きたいですね。
テクノロジーや先端技術、セコムの警備業と神山まるごと高専の親和性
寺田:セコムさんは、最近ではAIとかIOTとかセキュリティロボットなどを輩出されていますよね。学生たちとデジタルテクノロジーという点でも関わっていただければ面白いですね。
尾関:日本で行われている警備は、トラディショナルというか、まだ昭和時代のスタイルの警備業なんです。海外の方々は「警備会社が短時間で駆けつけてくれるサービスはない。日本全国にその仕組みがあるのは本当にすごい」と驚かれます。
お客様もセコムが駆けつけてきてくれることに、とても安心感を覚えてくれています。一方で、人力に頼り切ってしまっているのが日本の警備会社の課題だと思っています。そこにさらに現代のテクノロジーを用いたものを付加していきたい。そうすることで、よりお客様の安心感や安全性を高めることが出来ると考えています。
また、北海道から沖縄までカバーする必要がある中で、人手不足を補うためのテクノロジー、AIなどの必要性も感じています。
警備業のテクノロジーや先端技術が、神山まるごと高専のテクノロジーとの親和性に繋がればいいなと思いますね。
寺田:いいインスピレーションになれたら嬉しいです!高専自体、ソフトウェア分野を中心とした情報工学や電子工学まで、モノをつくる力の基礎をしっかりと身につけていきます。ソフトウェアとハードウェアの交差点になることもキーワードになっています。セコムさんという存在は学生たちにとって頼ったり頼られたりのコラボレーションする相手として、非常にありがたい存在になりそうですね。
尾関:高齢化社会を迎えるにあたり、安心安全の中のひとつとして高齢者の見守りやその延長線上にある健常者も含めたヘルスケアにも力を入れて行きたいと思っています。そういうことを研究なさる方がいらっしゃれば非常に嬉しいなと思いますね。
「どこまでやっていいか」ではなくて、「何を変えられるかな」という発想
寺田:尾関さんの15歳はどのような学生だったのでしょうか?
尾関:テニスボーイでしたよ。中学の時は全国大会ベスト4に入り、高校生の時はインターハイやインカレなどに出場するほど硬式テニスにはまっていました。
テニスで名を馳せている錦織圭選手は、テニスをするためにアメリカに渡った。自分のやりたいことを全うして初志貫徹した先に、あそこまで至った人だと思うんです。
神山まるごと高専は、そういう人たちが集まる場所だと感じています。神山に渡ったことでどのような未来が作られるか楽しみですね。
寺田:全寮制という環境の中で、教員から指導を受けつつも、学生たちがどう自立していくのか。そこもひとつの鍵だと思いますね。尾関さんが学生の時から大切にされているものはありますか?
尾関:あの頃と変わらないものといえば、「知らないことに興味を持ち続ける」という精神でしょうか。
寺田:興味を持ち続ける力が、キャリアを形成し経営を取り締まる立場に持っていってくれたという側面はありますか?
尾関:僕は、最初は銀行に9年間勤め、その後、鉄鋼メーカーに9年間、そしてセコムグループに来ました。そこで、グループの損害保険会社に16年、セコムにきて7年がたちます。各々の会社で「この会社をどうやったら変えられるか」ということに興味を持ち続けてきました。
職務権限の中で「どこまでやっていいか」ではなくて、「何を変えられるかな」と思ってきました。鉄鋼メーカーにいた時も技術者と話して「どうやって改善していこうか」と話すのが好きだった。今のセコムにきても、「どうやって生産性を高めていこうか」という話をするのが好きなんです。ものを変えて形になるのが嬉しいんですよね。
寺田:ちなみに、最初にトライしたことはどのようなことだったんですか?
尾関:1番初めは、銀行にいた時ですね。事務の人が、1日100枚くらい出る伝票をノートに全て書き写して、それを僕がチェックするということをしていたんです。
僕が書き換えた伝票を、その女性が保存用のシートに書き移し、それをまた僕がチェックする。「これ、無駄だよね」と、伝票を機械に打ち込みそのアウトプットを確認するだけの行程に変更しました。それが一番初めの改善ですね。そのシステムの名前はozekiにしました(笑)
寺田:まさにDXですね。誰も「これ、無駄だよね」と言う人がいなかったということですよね。
尾関:今まで行ってきている流れに疑問を持たず、これが仕事だと思って気がついていないことは多いですよね。Sansanの事業である名刺管理は本当に皆、困っていました。それをちゃんと管理しましょうと寺田さんがお困りごとを解決してくれた。そこからですよね。
寺田:「古くて新しい、誰も気づいていないことをやっていく」と、創業時に思っていましたね。今後、セコム奨学生とはどのような関わりをされたいでしょうか。
尾関:様々な会社を経験してきましたが、同業種の人よりも異業種の人からの話が気づきに繋がることが多いんです。特に若い人と話していると、こちらが刺激を受けて活力をもらいます。
警備のことやセコムのことに慮ったことではなく、「自分達はこんなことを考えている」ということを気兼ねなく話を聞かせてもらうこと。そんな接点ができることを楽しみにしています。
失敗を失敗としないためには諦めないこと、繋げたいセコム創業者の想い
尾関:創業者の飯田からは「失敗はなぜ失敗になるのか。途中で諦めるから失敗なんだ。諦めずに続ければ失敗にはならない」と、よく言われていました。
ただ、間違えたやり方でどんどん突き進んだら失敗の穴が深くなるだけ。失敗だと思った時に方向転換できれば持続することができます。
そのためにも、とにかく情報量を増やしてほしい。情報量が少ないとスピードに乗り遅れます。そして、この道が正しいと思った方向に臨機応変に変えられる柔軟さ。そういうマインドを持つことが大切だと思っています。
子どもたちには、自由に発想し、自由に活動してほしいですね。
寺田:「失敗談を教えてください」と聞かれると困ることがあるんです。やり方を変えながらしつこくやっていると、結局はやり方を変えるための一つの学習だったということにもなってくるんですよね。「失敗はないよな」と思います。
この学校でもその精神性を大切にしたいと思っていますし、実際にこのようなメッセージが学生に届き、体現してくれたらいいなと、今日お話聞いていて感じました。ありがとうございました。
[取材・文・構成] 池尻浩子 [撮影] 成瀬 陽介