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「やりたいことがないから、"とりあえず"進学」はもう古い!15歳の目を開かせるのは"面白い大人"の身近さ。


【まるごと高専円卓会議レポート】

まるごとnote(神山まるごと高専noteアカウント)編集チームです。
テクノロジー×デザインの教育で、人間の未来を変える学校、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

2021年3月3日(水)に「未来の、当たり前の学校とは」をテーマにした、参加者と共に高専を作るオンラインイベント『第2回まるごと高専円卓会議』を開催しました。

学校はどのように人間の未来を変えるのか」をテーマに開催された第1回に引き続き、今回も数多くの方にご参加いただき、チャット欄には意見がたくさん飛び交いました。

各業界のイノベーター3名ゲストに迎え議論する「未来の当たり前の学校」の姿とは?

【第1部】ゲスト
レストランsioオーナーシェフ 鳥羽周作さん
探究学舎代表 宝槻泰伸さん
LITALICO代表取締役社長 長谷川敦弥さん

神山まるごと高専理事長 寺田親弘さん(Sansan株式会社CEO)
神山まるごと高専学校長 大蔵峰樹さん(ZOZOの元CTO)
神山まるごと高専クリエイティブディレクター 山川咲さん(CRAZY WEDDINGの創業者)

※イベントの後半第2部では、参加者全員参加型の討論会を実施しました。本記事は、参加者からいただいたコメントを各テーマの末尾にてご紹介していきます。

りたりこ

心に火がついたのは、2年間見捨てずに関わってくれたから

探究学舎・宝槻さん:本日は皆さんよろしくお願いします。「未来の学校」を作るためには、良い教育とは何か、という哲学が大事だと思うのですが、神山まるごと高専はどんな哲学を持っていると面白そうでしょうか?

LITALICO・長谷川さん:学校ってポテンシャルのあるものだと思っているんです。例えば小学校や中学校ではほとんどすべての子どもが来ますよね。ただ高校、大学と年齢が上がっていくほど教師と生徒の関わり方が希薄になっていくんですよね。
大学を中退していたとしても、大学の先生は知らない、とかね。
学校の哲学や使命において、子どもたちと向き合うスタンスとして、粘り強く教育していくことは欠かせない点だと思います。すぐに何でも理解できる人が前提ではなく、解釈をするのに時間がかかる人もいるので。

恥ずかしながら、僕は高校時代にとにかく廃れた生活をしていて、自分のことを、ずっとダメ人間だと思っていたんです。でも、たまたま出会った焼肉屋さんのオーナー夫妻が、粘り強く関わってくれました。
当時の僕は何を言われてもふてくされて、「やりたい事もないから大学中退する」と言っていたのですが、オーナー夫妻は「あつみくん(長谷川さん)には可能性がある。あつみくんは日本を背負って立つ人になるかもしれない」と言い続けてくれたんですね。「うるさいな、この人たち」といつも喧嘩しながら、2年間も(笑)。

オーナーが励まし続けてくれた結果、2年後に僕の心に火がついた。決して見捨てることなく関わってくれたことに、すごく感謝していますよ。

学校長・大蔵さん:僕は福井高専の卒業生なのですが、高専の先生は程良い距離感で関わってくれながら、粘り強く関わってくれたことが印象に残っていますね。

神山まるごと高専では、それぞれの先生たちの哲学が尊重されるようになったらいいなと僕は思っていて。生徒たちが様々な先生に関わることで、一つの枠に留まることなく、多様性に触れられる学校にしていきたいですね。

探究学舎・宝槻さん:DoingとBeingという2つのキーワードあると思うんです。
Doingは例えばテクノロジーを扱えるとか、プレゼンがうまいとか、何かをよりよくできる人のこと。これが起業家的な要素でもあるし子どもを押し上げる”Power”でもある。
Beingは「あなたのその感じいいじゃん」とまるごと愛する”Love”の哲学。この両方があることが大事で。
既存の学校教育では、頭が良いと褒められる、運動ができると褒められるというような、DoingやPowerを評価することに終始することが多かったように思うんです。
だからBeingやLoveも一緒に担保していく教育っていいな、と思います。

クリエイティブディレクター・山川さん:学校のゴールもそこに向いているし、学校自体もそれで評価されている。だから先生たちもDoingを頑張るしかないとなってしまっている。

いい大学、いい就職をするとか、就職した先って、必ずしも幸せじゃないし、会社も倒産するし、誰かに頼って幸せになることって間違いだったんじゃないかと、大人たちが気づき始めていますよね。
「学校でどんな自分になっていきたいの?」をちゃんと考えていくこと。面白い大人たちが目の前にいて、それを15歳から考えられたら大きいですね。

ほうつき

《イベントの参加者のコメント》

「『あの人に教えてもらいたい!』『あの場所で学びたい!』という、生徒の希望を叶える機会を提供してほしいです」
「大人たちが良いと思う、新しいものだけを生み出すのではなく、古き良き日本らしい文化を継承し、足元から物事を考えられる若者が育ってくれたらいいですね」

縁遠いものが「身近」になることで、「自分にもできる」と思える

理事長・寺田さん:長谷川少年のような中学生に、神山まるごと高専に入学してほしいです(笑)。

LITALICO・長谷川さん:僕は田舎の貧乏な家庭で育ち、テクノロジーや起業などとは無縁な幼少時代を過ごしました。地元の仲の良かった先輩の進路はみんな土方、ダボっとしたズボンはいて働く姿がカッコイイと思ってましたし、僕も将来は土方になるんだろうな、と思って生きてきました。

でも、大学時代に先述した通り、焼肉屋のオーナーと出会って、「あつみくんは起業家に似てるよ!」と言われ続けたのがきっかけで、起業家の本を手に取るように。読めば読むほど、自分の幼い頃の体験に近いエピソードばかりが本に書かれていて。「意外と僕、こっちコースなのか?」と感動したのを覚えています(笑)。

一見縁遠いものでも、身近に感じる機会があれば、「自分にもできるかも?」と思えるようになるし、「なりたい!」と心に火がつくきっかけになる。田舎だとしても情報を身近に感じる機会があるだけで、選択肢は広がるように思います。

理事長・寺田さん:僕が高専を最強だと思っているのは、入学すると社会と直結している先輩が身近にいること。この”大人感”を大事にしたい。
15~20歳の子たちを「大人」として扱い、「君たちは何かしらやりたいことがあるんだよね」という問いかけを、この時期に繰り返しするから急成長できる。「精神と時の部屋」じゃないけど(笑)。

全寮制で、神山という田舎の学校に入るって、何となくで決断できることでじゃない。学校づくりのコンセプトとして、”利他的に学び、利己的に実現する”というキーワードがあるんだけど、やっぱり「自分がうれしい」「自分がやらなきゃ」という距離感でないと起業は実行できないと思うんですよ。

LITALICO・長谷川さん:あとは、普段子どもたちは大人の良いところばかり見せられるから、「この人は自分と違うんだな」と受けとって、「弱い自分には縁遠い」と感じさせてしまうと思うんです。

大人の弱い一面を隠すことなく、できていない部分もフルオープンにして関われる方が、子どもからの共感を得て、身近に感じてもらえるんじゃないかな。その場では取り繕って自信があるように見せても、実際は自信がなくて、葛藤している大人は多いですからね。

クリエイティブディレクター・山川さん:私はこれまで、人の深い部分と向き合う結婚式の仕事をしてきて思うのは、弱くて、脆くて、醜い部分にこそ人は共感できるし、美しさを感じるということ。弱い面も含めて互いに認め合えた先に、本当の何かが生まれていくと私は思いますね。

LITALICO・長谷川さん:神山まるごと高専の先生が、学生とオープンに関われるといいですね。「ぶっちゃけ先生も迷ってます、分かりません」みたいなスタンスで(笑)。先生の弱い部分を学生が見ることで、大人像への捉え方に変化が生まれるかもしれません


《イベントの参加者のコメント》

「私は高専卒生ですが、5年一貫であるおかげで、高専は縦と横の繋がりのある、家族のような居場所になりました。何をしていてもみんな違っていて良いと言ってもらえる文化が、居心地良かったです」
「専門分野に長けている教師ばかりでなく、際立った特徴のない素朴な先生がいることも、学生のためになるのではないでしょうか。生徒には色んな大人の姿を見てもらうのがいいのかなと思いました」

しお

特色あるビジョンを掲げることで「ここしかない!」と思える居場所に

sioシェフ・鳥羽さん:我々のレストランは料理人を育てる場所なのですが、「シェフにならなくてもいいよ」と伝えています。「シェフにならなきゃいけない」という感覚がプレッシャーになるとしんどいですし、誰もがシェフを目指す必要はないと思うんです。

あるメンバーは1on1をした際に「料理の現場からは離れた方が良さそう」という結論になって、今は隣の席で広報として連載を担当し、いきいきと活躍してくれています。僕は必ず一人ひとりに合った居場所を作ると約束するし、メンバーは見つけたポジションで各々頑張ってくれている。

神山まるごと高専もそんな風に、学校としての哲学や指針があって、多様な先生がいて、学生たち全員がここで居場所を見つけられるような学校になるといいなと思います。

LITALICO・長谷川さん:いいですね。また、自分がワクワクすること、幸せを感じることを理解して、実現する姿勢を持てることは大事ですよね。教育の過程で、学生は協調性や同調を求められるし、少しでもはみ出したら「あなたは自己中心的ですね」と言われる。周りに適応することが幸せなんて、そんなことあるはずないじゃないですか

内に秘めた喜びがあるはずなのに、教育の過程の中で忘れ去られてしまうのは、もったいない。現に、協調性を大事にし過ぎて、大人になってから「自分の本当の喜びって何だろう」と探し始める人がたくさんいます。自分の中にある幸せを追求することは、決してわがままなのではなくて、尊くて大事なことであることを、学校が伝えてほしいですね。
もちろん、将来は自分の利己と社会への利他を繋げ、折り合いのつけ方も学習する必要がありますが、何かやってみたいという気持ちは利己的に始まっていいんです。
それが人生や学びへのエネルギーを生み出してくれますから。

sioシェフ・鳥羽さん:僕にとって、初めて自分で人生を意思決定をしたのは高校受験でした。サッカー部に所属していたので、サッカーが強い高校に進学したかった。それが高校を選ぶ基準だったんですね。

神山まるごと高専には、平均的な学校よりも、中学生が見ても分かる、何か特色のあるビジョンが掲げられるといいですね。例えば、「テクノロジーやデザインを使って、若くして自分のやりたいことを実現できる学校」みたいに。万人に選ばれる必要はなくて、「自分にはここしかないんだ!」と学生に思ってもらえるような学校であることが、求められている気がします。

早い段階から「こういうことをやりたい」と決めている子もいれば、まだまだ分からない子もいる。どんな状況であれ、何かしらのエネルギーを持っていて、「何かやってみたい」と思っている子の受け皿となり、神山まるごと高専がまるっと引き受けて応援できる存在になれば、これまでにない魅力的な学校になるのではないでしょうか。

クリエイティブディレクター・山川さん:何かこう、心にこみ上げるものが強い子が入ってもらいたいですね。そういう「何か」にひっかかる学校が神山まるごと高専でありたい。

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《イベントの参加者のコメント》

「生徒と教師が一体となって、神山まるごと高専自体のマーケティングやプロジェクト管理をしたら面白そう!学園祭のようなイメージで、「高専祭」と名付けるとかどうでしょうか」
「起業家やイノベーターとして活躍している人を講演に呼んで、気に入った講師の職場体験ができるのはどうかな?多くの選択肢を、実際に体験できたら楽しそう!」


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大人もこどもも、同じチームで0から作る学校

探究学舎・宝槻さん:進学校=ステータスというようなレール感や、「何もやりたいことがないから安パイに大学に進む」というような選択肢をなくしてしまうような杭を打ちたいですよね。進学校だけじゃなく、美術高校、商業高校、高専…、あらゆる進学の選択肢がフラットになる布石として、神山まるごと高専が光輝いてくれるのを期待したいです。

理事長・寺田さん:僕は学生の頃、社会システムの中でやはり「進学校に進めば成功」というイメージが培われていたので、大卒後は大きな企業に入ってから起業を経験しました。でも、今の若者世代は、「イケてる人は起業する」という選択肢が増えてきている。すごく大きな変化ですよね。

今後起業という選択肢を見据えるなら、「社会に直結する学校の方がいいじゃん」という認知が広がっていくかもしれない。神山まるごと高専が、進学の選択肢に一石を投じることができるかもしれませんね。

sioシェフ・鳥羽さん:僕が教員をやっていた頃、特別学級で指導していた際に、あるお母さんから「生きる力を子どもに教えてほしい」というリクエストがあって。すごく心に残っているんです。

ここは今から作る学校なので、先生たちだけではなく、学生たちとも一緒に作っていく発想でいるのは面白いですよね。学生の生の声を聞きながら、一緒にPR案を考えていくとか。これまでの学校は、決められたことをやっていたけど、この学校では大人と一緒に0→1を作れる。一緒に作る過程で役割ができて、子どもの居場所になるのも面白そう。

学校長・大蔵さん:学校としてまだまだ形になっていないですし、全員が同じチームとして、同じ目線で動かしていきたい。もちろん学生も一緒になって、同じ方向を向いて、一緒に学校作りを進めていきたいです。入学してくる学生も含めて「創業者」になるイメージ

まだ僕が勝手に考えているだけの構想をシェアすると(笑)、神山まるごと高専は全寮制なのですが、3年生までの分しか寮を用意していないんです。4年生からの寮はないので、1年生が「3年後に住む寮を作る」。これを学生が主体になって、考えてもらおうかなと構想しています。

かかる費用やコストの回収まで全部考えてもらって、どうやって住む場所を確保できるか、真剣に考えてもらう。寮の一部を、Airbnbみたいに開放して、収益化するとかも面白いかもしれないですね。お金の勉強も兼ねて、住まいからビジネス体験ができたらなと。

sioシェフ・鳥羽さん:これだけ優秀なイノベーターの皆さんが学校作りに携わるので、学生はこのチャンスを利用しない手はないですね!実体験として、自分たちでビジネスなど何かを作って学ぶことができるのは、神山まるごと高専ならではの特徴になりそう。

学校の進路を選ぶ際に、「ワクワクしたかどうか」ってすごく大事になると思うんです。何かを一生懸命考えて、新しいものを作ることができるチャンスがこの学校にはある。そしてサポートをしてくれる先生もいるとなると、自分が学生だったら絶対に通いたいですね!

LITALICO・長谷川さん:参加者の方から、「一緒に聴講している小4の息子が、この学校に行ってみたい!と反応しています」とコメントをいただいていますね!

クリエイティブディレクター・山川さん:いい学校ができていくだろうなというエネルギーの渦をこの会議ですごく感じた。私自身、自分で何も選ぶことがなかったところから15歳のタイミングで「高校選んでいいよ」と言われて、初めて自分の人生が開いていく感覚になったんです。15歳を迎える子どもたちに、きっかけとなるような選択肢を届けていけるのが楽しみです。

学校がどうあるかも大事だし、学生の皆さんに何を伝えられるかも大事。今日は本当にわくわくしたいい会になりました!

皆さんのお力も借りながら、今後も一緒に作っていければと思いますので、応援よろしくお願いします!

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【イベント登壇者プロフィール】
ホスト
大峰 峰樹 神山まるごと高専 校長・株式会社ZOZOテクノロジーズ取締役
国立福井工業高等専門学校を経て、大学院在学中に起業。ZOZOTOWNのサービス開発に協力したのをきっかけに、ZOZOに入社。2015年にCTOに就任

寺田 親弘 神山まるごと高専 理事長・Sansan株式会社CEO
三井物産在職時に、米国シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開支援に従事。2007年に、Sansan株式会社を創業。

山川 咲 神山まるごと高専 クリエイティブディレクター・株式会社SANU取締役
2012年にCRAZY WEDDING創設。2020年3月27日にCRAZYを退任し独立後、ホテル&レジデンスブランドSANUの非常勤取締役及びCreative Boardに就任。

ゲスト
鳥羽 周作 sioオーナーシェフ
サッカーのJリーグの練習生を辞め、小学校の教員を経て、32歳で料理人の世界へ入門するという異色の経歴を持つ。代々木上原のフレンチ料理店sioでシェフを務める。

宝槻 泰伸 探究学舎代表
子どもが「わあ!すごい!」と驚き感動する世界にたった1つの授業を求めて、2011年に探究学舎を開校。現在、延べ3,500名の生徒が受講中。2019年3月に情熱大陸に出演。

長谷川 敦弥 株式会社LITALICO代表取締役社長
「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、障害のある方に向けた就労支援サービスを全国に58箇所、他子ども向けの教育サービスやものづくり教室など多数展開。

次回予告

5月17日(月)19:30~スタートのまるごと円卓会議は、特別編

アーティスト集団「チームラボ」代表の猪子寿之さんをゲストに迎え、現役学生との対談で学校のリアルに迫ります。

皆さんは、学生の時、何に悩んでいましたか?

そして大人になった姿をどう想像していましたか?

今回、現代を生きる中高生たちにの声を聴き、その声を元にした学校作りに、猪子寿之さんと神山まるごと高専学校長の大蔵、理事長の寺田、クリエイティブディレクター山川で挑戦します。

ぜひご参加お待ちしております!

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▼学生の参加者はこちら▼

※設置構想中のため、今後内容変更の可能性があります。


[取材構成編集・文] 水玉綾、林将寛