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無償の学校実現へ。神山まるごと高専、奨学金基金完成の裏側

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

神山まるごと高専では、いかなる家庭でも目指せる学校になるために、200万円かかる学費に対して、給付型の奨学金を提供し、実質無償の学校を目指していました。

そのために構築しようとしていたのが、「奨学金基金」でした。
2022年1月のnoteで、学費無償化に向けた思いを、理事長の寺田よりお話しさせていただきました。

そして、2023年3月9日
本校は、奨学金基金へ協力してくれるスカラーシップパートナーが11社集まり、学費無償化を実現できたことを発表しました!

今回、この学費無償化を目指し、提案活動に奔走した理事長寺田と、パートナー担当の長谷川に、その裏側をインタビューしました。

「ほっとした」が、正直な気持ち

ーー奨学金基金が無事に完成しましたね。率直に今はどんな気持ちなんですか?

寺田:「ほっとした」というのが正直なところですね。
うん。「ほっとした」この言葉に尽きると思います。この奨学金基金、構想を掲げてから本当にたくさんの反響をいただきました。一期生に関しては無償化をすでに発表していますが、今受験を検討している中学二年生の皆さんや、その下の年次の皆さん。そしてこのスカラーシップの取り組みに乗っかってくれている企業のみなさん、から本当に大きな期待をもらっていて、「できない」ということがありえなかった。

0か100か。「90%までしかできませんでした・・」が言えない。やり遂げる以外の選択肢がない状況でした。

長谷川:ぼくはこの奨学金基金ができなかった時のことは正直あまり考えていなくて、そこの不安はありませんでした。ただ、11社が無事に集まって肩の力がふっと抜けて、「あ、こんなに緊張してたんだ」と気づきました。この緊張感を持ちながら日々過ごすのがなかなか・・笑

例えば、メッセンジャーやメール一本打つのに、ここまで緊張するんだ、と。ぼく自身、営業経験が短いわけではないんですが、そこまで一挙手一投足を考え抜かなければなしえなかったものでした。あの緊張感は初めての体験でした。

ーーそんな日々が・・。ちなみに、この奨学金基金の構築をフェーズに分けるとしたらどんなものでした?

長谷川:ちょっと今回の取材を受けるためにまとめてきたんですが、本当に色々なことがありました。綺麗なフェーズ分けは正直なくて、トライ&エラーの繰り返しですね。
例えば、最初の最初は、100億円相当の基金を作るとか、そんな話じゃなかったんですよ。

長谷川嵩(神山まるごと高専 Relationship Manager)
2012年、新卒でヤマハ株式会社入社。2015年、”新しい価値を生み出し、世界を変える”という本気の想いに賛同し、 Sansan株式会社へ入社。
トップセールスとして名刺管理市場創出を牽引した後、自らSansan社長 / 神山まるごと高専理事長の寺田に直談判して高専プロジェクトに参加。
累計140億円以上の資金調達・50社以上のパートナー企業連携を担当。

寺田:そんなこともあった!記憶の彼方になっていますが。最初、どういう風にこの学費を扱えば良いか手探りの中で提案活動をしていたんだけど、全然うまくいかなくて、神山まるごと高専の発起人の一人でもある2100の国見さんに相談に行ったんですよね。

当時は、目標金額50億円で、一部支払える学生の皆さんには負担をいただくという、今思えば複雑なスキームで。そこを国見さんから、「倍集めて完全無償にすべきだ。」と看破されたんですよね。一円もお金が集まらず、全然提案活動がうまく行っていない中で相談に行ったのに目標金額が倍になるっていう笑

当時の営業資料

長谷川:1社も集まってなかった状態ですからね。けど言われてめちゃくちゃ納得感もあって。結果このアドバイスが効きましたよね。格段にわかりやすい提案になりました。このアドバイスを起点に、奨学生チームを作って、企業とコラボレーションができるんじゃないかとかさまざまなアイディアが生まれて行きました。

募る期待とその裏側で感じた責任感

ーートライ&エラーな日々でも、特に困難だった時はどんな時ですか?

長谷川:2021年11月に、このスキーム自体が財務上の観点で成立しないかも。となった時ですかね。1社も決まっていない中だったので、絶望感がありました。
このスキーム自体が日本初のものなので、様々な観点で問題がないか企業としてはしっかりと見る必要があります。とある企業で話が進み、参画できそうか。となった際に、監査法人からの指摘で大きな論点が出てきて。そこをその企業の担当者の方が本当に丁寧に調べて、クリアにしてくれて。その方が陰の功労者というか、本当に道を作ってくれました。

寺田:長谷川が具体的なエピソードなので、私はちょっと全体的な話を。
皆さんの期待値を常に背負っているのが困難というか、辛い部分はありましたね。もちろん、私たちが描いた目標だったり、先の世界なんです。それに皆さんに共感していただき、「きっとできる。できたら素敵だ」と思ってもらって、乗っかってもらって、それでプロジェクトが前に進む。それ自体ありがたすぎることなのですが、その一方、その期待が大きくなればなるほど、自分の肩にのしかかるものを感じました。

ーー大変なことも多かったとのことですが、一方、横から見ていると、二人が感動している時とか、喜んでいる時とか。笑顔や涙もたくさん見ました。このプロジェクトを進めていなかったら、出会えなかったことはどんなことでしたか?

寺田:相当ありますね。本当にやって良かった。日本を代表する経営者と本当に密なやりとりをできたのは私自身とてもいい経験になりました。
長谷川は何かある?

長谷川:ぼくは2つあって。1つは、本気で応援してくれる人がこんなにたくさんいるということに、感動しました。先程の財務上の論点をクリアして前に進めてくれた方であったり、多くの担当者の方が、全力で。
とある企業は、取締役会の当日の早朝に「この情報があればうまくいけると思うので教えてください!」なんてメールをもらったりして。このプロジェクトにこれだけ熱い思いが集まっているということが嬉しい。

2つ目は、昨年行ったサマースクールの時に、参加している学生からこの奨学金基金に取り組んでいることに対して、「ありがとうございます」と言われたことですね。

寺田:それは嬉しいね!

長谷川:ちゃんと学生たちにこの意図が伝わっているんだと、とても嬉しかったです。

寺田:実際に、結果としてみても経済的な要因に偏ることなく学生も集まってくれて、本当にいい取り組みになったね。

学生と企業、双方に価値のある取り組みに

ーー参画いただいた企業の皆さんとは、具体的にどのように連携はするのでしょうか?

長谷川:資金の提供企業とともに学生が学びを深められるように設計しています。1学年が44人。スカラーシップパートナー企業が11社いますので、1社につき4名の、その企業名を冠した奨学生が生まれます。

その奨学生たちは、5年間を通じて、企業側と連携した活動を行い、ビジネスについての理解や、学びを深めていってもらいます。最初のうちは、「企業理解」をテーマにすえ、奨学金を提供している企業について。ビジネスについてを15歳のタイミングから学んでいただきます。

これは、学生視点で見たときに、授業で学んだ「モノをつくる力で、コトを起こす」ことが、常に身近にある環境を作れること。そして、企業側から見ると、常に自社のイノベーションを考えてくれる優秀なブレインたちが外部にいること。双方にとって価値のある状況を作れるのではと考えています。

日常の風景になるのが一つのゴール

ーースカラーシップパートナーとの連携がもう4月からスタートしますが、どのようにして行きたいですか?

長谷川:意味あるものにしたいですね。言葉は安っぽくなっちゃいますが、15歳のタイミングで、こんなにビジネスの人々と連携できる機会ってそんなにないんじゃないかなと思っていて。しかもその企業が日本を代表する企業たちで。これは意味あるものになると思うし、意味あるものにしていかなきゃいけないんだと思います。

寺田:まず、この一年、二年仕組みを回して、このスカラーシップパートナーと学生との連携を日常の風景にして行きたい。企業にとっても、学校にとっても、学生にとっても、関係者にとっても日常の風景に。
一次のモメンタムではなくて、これが日常になったら本当にイノベーションだと思う。

そしてこの学校自体は、100年続くことを目指していくんだけど、例えば50年後、今この携わった企業の皆さんや私たち自身も、個人としては生きていないかもしれないし、別のことをしていると思う。学生も入れ替わっているだろう。

そんな中でもこの取り組みが回り続けていたら、なんて表現が適切かわからないけど、思いが繋がっていくことになるんだと思う。

ーー学生とはどのようにコラボレーションしたいですか?

寺田:学生には企業にやりたいことを求めまくって欲しい。企業側は学生の皆さんのこれをやりたい、あれをやりたいというリクエストをある種待っている。だからたくさん求めたらいいと思う。ロート製薬さんに目薬のことを聞いたり、デロイトさんにコンサル業界を聞いたり。なんでも聞いていい。

それをしたいと思える、野心的な学生に集まって欲しいと思います。世の中を変える人が押し並べて持っているのは野心だと思っているので、ぜひ、2期生、3期生となる皆さんにも興味を持って欲しいです!

情熱のある新たな仲間に来てほしい

ーーそして現在、新しく「スカラーシップパートナー・アライアンス責任者」を募集していますが、来て欲しい人。長谷川さんが一緒に仕事をしたい人はどんな人ですか?

長谷川:能力的には、営業経験があって、ものすごくたくさんのステークホルダーの皆さんがいるので、連携とりながら進められる人がいいなと思います。

人柄的には、強い情熱があって欲しい。やっぱりこの学校は情熱のプロジェクトで、寺田さんを起点とした、たった一人の情熱から、どんどん掛け算で大きくなっている。そこの情熱を背にちゃんと走れる人がいいかなと思います。
パートナー企業の担当者の皆さんもものすごい情熱傾けてくれていて、そこに掛け合わされればきっとさらに素敵なことができるんだと思います。

ーー情熱を持った人にたくさん応募いただけると嬉しいですね。最後に、1年半走り続けた2人ですがお互いに向けてコメントをお願いします。

寺田:長谷川が来なかったらやれていなかったかなと正直感じています。やはりビジネス的にも能力的にも物事の動かし方をよく知っているので、1言えば10動いてくれて助かりました。長谷川も気持ちが乗るタイプなので、商談の場で想いの部分のちゃんと伝えられる。お互いにいいコンビで走ってこれましたね。

長谷川:経験したことが無い業務への戸惑い、果てしないとすら思えてしまう目標、色々あり過ぎて超つらいことだらけでしたが、寺田さんと駆け回った 1 年半は、かけがえのない宝物です。「たった1人の情熱で、世界は変わる」と寺田さんから学びました。世界一の社長 and 理事長として、世界一尊敬しています!

神山まるごと高専では、「スカラーシップパートナー・アライアンス責任者」を募集しています。
ご興味のある方は、ぜひ次のリンクをご覧ください。
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