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神山まるごと高専(仮称)が「入学試験」に込める想い

まるごとnote編集チームです。
「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専(仮称・認可申請中)(以下、神山まるごと高専)に関する情報を伝えています。

神山まるごと高専(仮称・認可申請中)は、2023年4月の高専新設に向けて着々と準備を進めています。今年秋〜冬に実施予定の入学試験も、ようやく形が見えてきました。

従来とは異なるユニークな学校を目指す、神山まるごと高専。その入試は、どのような内容になるのでしょうか。事務局長(予定)の松坂孝紀に聞きました。

事務局長予定の松坂孝紀

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※本記事の内容はあくまで全体の方針であり、具体的な入試内容については変更の可能性があります。

入試で重視するのは「学校とのマッチ」

ーー神山まるごと高専の入試について教えてください。ずばり、どのような試験になるのでしょうか?

一般的な入試との大きな違いは、偏差値ではなく「学校とのマッチ度合い」を重視している点です。

学校は偏差値という一義的なものさしで測られており、「偏差値が高い=すごい学校」というイメージが強いですよね。私自身も振り返れば、「偏差値が高いからすごい学校に違いない」という、曖昧な気持ちで過去、学校を選んでいた気がします。

でも、今の社会は良し悪しを一義的なものさしでは測れません。それならば、いろいろな学校があっていいはずだし、偏差値の高い・低いではなく、「自分が目指す将来に合う学校」を選んでほしい。そんな想いが強くあります。

また、入試合格は、ゴールのように思われるかもしれないですが、「スタートライン」です。無理して自分に合わない学校を選んでしまったら、どれだけその学校に憧れていても、志望度が高かったとしても、入学後につらくなってしまいます。

そもそも高専全体の留年率は高校と比べて高く、3.7%(文部科学省平成27年調査より)。そして、神山まるごと高専の授業は決して簡単ではありませんし、さまざまな課題も出ます。

つまり、大前提として神山まるごと高専の学生の皆さんは、入学後、たくさんのことを学ぶことが求められます。課題に取り組む中で大変な時もあると思います。苦しい時に頑張るためにも、神山まるごと高専が求めることと、学生の皆さんがなりたい姿がマッチしているかは重要です。

ーー神山まるごと高専とマッチしているかは、どのように判断するのでしょう?

以下の「神山まるごと高専が求める学生像」から判断します。

それでは、1〜5の項目ごとにご紹介します。

1. モノづくりに興味や関心がある人

神山まるごと高専は「高専」であり、目指しているのは「モノをつくる力で、コトを起こす人」です。「手を動かすアントレプレナー」とも言い換えられるかもしれません。あくまでモノを自分自身でつくりながら、コトを起こせる人を育てたいと考えています。

つまり、モノづくりへの関心は絶対条件です。興味を持とうと思って持てるものではないですから、本校への適性という意味では第一条件と考えています。

2. 多様な価値観を受け入れ、自分の意見を伝えられる人

いろいろな考え方に対して、それを受け入れつつも、「自分はこう思う」と意見を言える人かどうか。むやみに同調したり、自分の意見を押し殺して我慢したりするのではなく、かといって喧嘩をするのでもなく、建設的に自分の意見を相手に伝えながら、物事を進められる人であってほしいです。

神山まるごと高専が育もうとしている起業家精神やチームワークにもつながりますが、そもそも全寮制の学校ですから、それができなければ学校生活を送る時も苦労が多いと思います。

3. 情報を適切に処理する思考力がある人

学力は「暗記が求められるもの」と「思考力が問われるもの」の大きく2つに分類できます。私たちは前者の暗記についてはほとんど求めていません。
現時点で、歴史の年号をたくさん知っているとか、英単語をたくさん知っているとか。知っていることにもちろん価値はありますが、私たちは、それをどう使いこなすかに重きを置いています。

例えば、入試の学力テストは国語と数学を予定していますが、漢字の読み方を問うような問題の出題は考えていません。「こういう風に書かれているということは、きっとこういう意味だろう」と、情報を読み取り、自分の頭で考えられる力を求めています。

4. 正解のない問いに対して、独自の解を出せる人

3つ目は「正解のようなものがある問題」への考える力ですが、4つ目で想定しているのは「正解がない問題」に対して考える力です。

例えば「将来どんなことをやりたいですか?」という問いへの答えは、人それぞれです。他に「将来AIが発達したら、〇〇の職業はどのように変わると思いますか?」といった問いも、正解がないものですよね。

そういう問いに対して、自分なりの解を出す。そういった姿勢やマインドを、神山まるごと高専では大切にしたいと思っています。

5. 必要な学習を続ける意欲があり、学んだことを活かせる人

ここまでご紹介した1〜4つ目は、近年重要性を指摘されているものだと思います。そういう意味では、神山まるごと高専独自のもので、かつ最も特徴的なのは、5つ目です。学力ではなく「学習力」を見たいという想いが込められています。

極端な話、たとえ現段階で知識がなかったとしても、「1カ月後にここまで身に付けてね」と言われたことに対し、勉強してキャッチアップができるのであれば、それでいいと思っています。

この学習力は、入試や入学後はもちろん、生涯を通じて非常に重要です。

「テクノロジー」「デザイン」「起業家精神」という神山まるごと高専の3つの柱の中で、特にテクノロジーの領域は、高専の5年間で得たものが一生の糧になることはまずありません。

時が経てば必要なテクノロジーは変わり、必要な学習も都度変わる。現に、社会の中で活躍している方々は、常に学び続けています。だからこそ、「学習を続けられる力」はとても大切です。

入学試験で必要となる学力とは?

ーー学力よりも「神山まるごと高専が求める人物像に合うか」を重視し、1〜5の条件と照らし合わせて選考を行う。それが基本の考え方なのですね。

そうです。だから最近よくいただく質問の中で、最もお答えしにくい質問は「偏差値はいくつですか?」です。偏差値は学校が決めるものではないということもその理由の一つですが、仮に偏差値の基準があったとしても、それが目安になるとも思っていません。

ーーとはいえ、学力テストも行うわけですよね。どの程度のレベルが求められるのでしょうか?

学力テストでは、「中学校3年間で教わる基本的な学習内容がきちんと理解できているか」を測るイメージです。

そもそも神山まるごと高専は高等教育機関に位置付けられる学校であり、そこでは様々な内容を学ぶために授業が行われます。
授業にはAIやIoTなど専門的なものも含まれますが、その基礎となる知識を得るための授業も行っていきます。特に数学はテクノロジーの基礎となるものですから、入学後も数学の授業は充実しています。学力テストを行う理由は、これらの授業に支障なくついてこれるかを確認したい、ということです。
算数がわからなければ数学ができないように、中学3年間で学ぶ数学を理解していない人に、高専の数学についてくるのは困難です。
ハイレベルな学力は求めていませんし、難関高校の入試で出るような難しい試験対策も必要ありません。ただ、ベースとなる中学校3年間で習う基礎学力は求めます。そこを測るための学力テストを設計しています。。

ーー学校の成績が良い人の方が有利ですか?

学校の成績自体はあまり関係ありません。内申書の提出は求めますが、そこで見たいのは「3年間何をしてきたあなたなのか」です。

たとえば、内申点が高い人は、3年間勉強を頑張ってきた人だということがわかりますよね。当校では、内申点がいいこと自体ではなく、必要な学習に対して頑張る力がある人であるということを評価します。これは「必要な学習を続ける意欲があり、学んだことを活かせる人」につながります。
他にも部活動などで表彰されていることが記載されていれば、自分なりに工夫しながら過ごしてきた3年間が見て取れ、これは「正解のない問いに対して、独自の解を出せる人」につながってくるわけです。

仮に学校に行っていない人の場合、内申点はゼロに近いと思いますし、何を頑張ってきていたのかはわからないですよね。ですから、そのケースでも「学校に行っていない間に何をしていたのか」がわかるような資料を別途提出してもらおうと考えています。

「プログラミングの勉強をしていました」「〇〇の研究をしていました」「YouTubeにハマっていました」「寝てました」など、いろいろな人がいると思いますが、いわゆる学校の優等生じゃなくていいので、中学校の3年間でどんなことに熱中して頑張ってきたのか、そしてその3年間の過ごし方が神山まるごと高専の求める人物像に近いのかを知りたいと思っています。

ーー入試でプログラミングなど、特別なスキルは必要ですか?プログラミングやデザインの経験がないと不利ですか?

必要ありません。もし何か特別な経験や実績があれば、内申書と一緒に提出する資料でアピールしてください。
ここは先程お話しした学習力とも関連していて、今ゼロでも、入学後しっかり学んでもらえればいいと考えています。

プログラミング、デザインの経験がないからと言って入試が不利になることはありません。神山サークルの「言葉に強くなる」「数字に強くなる」「絵に強くなる」「プログラミングに強くなる」の4個のうち、最低1個「ここは私も自信あるよ」という項目を見つけられていれば、大丈夫です。1.5個あったら最高ですね。

神山サークル

内容やスケジュールなど、入試の概要は?

ーー具体的な入試内容について教えてください。

まだ文科省審査中なので、具体的なことはお伝えできませんが、1次試験で学力テストなどを行い、1次試験の合格者が面接などの2次試験に進む流れを予定しており、1次試験はオンライン、2次試験は神山町での実施を予定しています。

試験内容としては、先述した5つの人物像と照らし合わせ、本校の学習方針や育てたい人物像とマッチしているかを重視したものになると思います。

例えば「4. 正解のない問いに対して、独自の解を出せる人」を見るための課題レポートを出したり、「3. 情報を適切に処理する思考力がある人」かどうかを測るために、与えられた情報を適切に処理できれば答えを導き出せるような問題を出したり、そういった工夫は考えられるでしょう。

また、神山まるごと高専は学力も求めますが、より重要なのは学習力だと捉えていますので、「5. 必要な学習を続ける意欲があり、学んだことを活かせる人」を判断するための選考も検討しています。

自ら学習計画を立て、遂行する力が必要ですから、例えば学力テスト後に自身の学習プロセスを振り返ってもらうなど、そういったところから学習力が見えてくるのかなと思います。

ーー入試の全体像・スケジュールについて教えてください。

9月中旬に入試要項の公開を予定しています。

入試には推薦入試一般入試があり、12月〜1月にそれぞれ実施することを予定しています。これらはまだ計画中の話ですので、決まり次第、入試要項の公開とともにご案内する予定です。

ーー推薦入試を受ける条件は何ですか?
一般的には「学校からの推薦」であることが多いですが、神山まるごと高専は「学校からの推薦に限らない」という方針です。内申書の考え方と同じように、中学校3年間で何をしていたのかを見たいと思っています。

なので、「あなたの中学校3年間を知っていて、客観的に評価できる人」が「あなたは高専に向いているし、入ったらいいと思う」と考えてくれるのであれば、その人から推薦してもらってください。

ただし、推薦者は第三者に限ります。自己推薦や保護者からの推薦は受け付けない予定です。

ーー女性も受験できますか?

もちろんです。男性でも女性でも、本校に興味持ってくれた方は、受験してほしいです。

ちなみに、神山まるごと高専は、男女比率1:1を目指しています。
一般的に高専は男性が多く、高専全体の女性比率は21.8%です(国立高等専門学校機構より)。不安に感じる人もいるかもしれませんが、恐れず、ワクワクする自分の心のまま、飛び込んできてもらえたらうれしいです。

現状、神山まるごと高専に関心を持ってくれている学生を見る感じだと、男女比率は良いバランスになりそうかなと思います。8月に開催するサマースクールの参加者比率は、だいたい男女半々になりそうです。

入試に向けて、必要な準備とは?

ーー結局、何の準備をすればいいですか?

大きく3つあります。

1つ目は、「正解のない問いにたくさん向き合うこと」
一番わかりやすいのは、「自分は何が好きなのか、何が得意なのか」かなと思います。これは大人になってからもずっと考え続けることですから、ぜひ突き詰めて考えてみてください。

2つ目は、「学校選びの前に『生き方選び』をする意識を持つこと」
中学生にとって学校選びは重大なトピックですが、「入学を目的にしないでほしい」というのが私たちの願いです。「どういう人になりたいのか」「どういう人生を送りたいのか」を自分なりに考えた上で、それに合致する学校に入ってほしいと思っています。

3つ目は、「数学」です。
お伝えした通り、特に数学は積み上げが重要です。中学校の数学がわからない人が、いきなり高専の数学を理解することはできません。

ーー最後に、神山まるごと高専への入学を希望している中学生に、メッセージをお願いします。

入試に関しては、とても神山まるごと高専らしい試験ができつつあるなと思います。神山まるごと高専は特色がある学校ですから、そこに合う学生に入ってもらうことを考えると、自然と入試にも特色が出ます。

入試対策は、「この教科を対策すれば良い」「過去問の傾向はこうだ」というのがなく、非常にやりにくいと思いますが、この時点で「高専に合う・合わない」の判断の分かれ目かとも思います。

「神山まるごと高専で学ぶために必要な力とは?」「そのために必要な準備とは?」という問い自体に、そもそも正解はありません。これらの問いに自分なりの解を出して、取り組める人が神山まるごと高専に合う人だと思います。
繰り返しになりますが、「自分がどうなりたいのか」「そのためにどんな学校に行くのか」をしっかりと考えて欲しいと思っています。

神山まるごと高専は全寮制の新設校ですから、未知の世界でもあります。人と違う選択肢を選ぶことへの不安もあるかもしれませんし、入学後も壁にぶつかって、逃げたくなる時があるかもしれません。

そんな時、支えになるのは「自分の意思でチャレンジする」と決めた気持ちです。そういう想いを持った人たちと一緒に5年間の生活をともにし、未来を切り開いていける人になってほしい。それが私たちの願いです。

皆さんの挑戦を、楽しみにお待ちしています!

[取材・文・構成] 天野夏海 [撮影] 澤圭太


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