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#神山まるごと高専のヒト「クラスマネジャーが見た、開校初年度の神山まるごと高専」

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

神山まるごと高専は、開校から2年目に入りました。山あり谷ありだった開校初年度。本当にたくさんの方に支えられ、後押しをいただきながら、一年目を乗り切りました。

その一年目を学生たちとともに乗り越えた、クラスマネジャー(※本校では担任をクラスマネジャーと呼称しています)たちは、どのように振り返るのか。学校長である大蔵も交えた対談取材をお送りします。


ーー2023年度お疲れ様でした。(取材は2024年3月末に実施)明日からはいよいよ新入生を迎え、2年目が始まりますね。そんな中で、1年間を皆さんに振り返ってみてもらいたいです。どんな感想を持ちましたか?

春田:開校初年度を迷いつつだけど進みました。その中で持ったのは、学生と一緒に「冒険」しているようなイメージです。

危ないからやめようとか失敗するからやめようとか、そういうシーンでも、とにかくやってみよう。と自然に思えるような、そんな毎日でした。そう思えたのは学生たちがのびのび、本当に何者にも縛られずに飛び立とうとしてくれたからです。私がみてきたこれまでの学校教育現場では、目には見えない何かに縛られている高校生とかたくさんいたなと思います。私自身もその縛りになってしまっていたのかもしれません。ただ、縛りを解いた時に、10代の若者のポテンシャルがこんなにも高いのかと、驚き、嬉しく思いました。

春田麻里
徳島県で高校教員として26年間勤務。探究の担当として、校外での活動を進路に結び付けることの楽しさを学生と共に味わってきました。

鈴木:学生のポテンシャルの高さを感じました。何かアクションをした後のレスポンスの速さが想定以上だし、すごい成長スピードを感じます。

最近FRC(First Robotics Competition)の挑戦を学生がしていますが、当初はあんなにちゃんとロボットが作れるとは思っていなかったです。ロボットってそもそも「ちゃんと動く」という段階に持っていくだけでも一苦労。その手前に、形にすることができず諦める人たちもたくさんいます。自分たちの頭の中のことを想像だけじゃなくて、形にする。動かす。これができたのは素晴らしいなと思います。

私自身、学生のこのポテンシャルを前に、手取り足取り何かしてあげるのではなくて、彼らがやれるところまでやってみるのを横で見ている。言い方があれですが、放っておいているような感じです。その一方で、「自分は何の貢献ができるのだろう」っていつも思っていました。

鈴木知真
1989年宮城県生まれ。宮城工業高等専門学校卒業後、長岡技術科学大学工学部に編入。同大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。2016年に仙台高等専門学校助教に着任。情報・電気電子系の授業や、ロボコン部顧問を担当。また、学科改組により新設したロボティクスコースの立ち上げに関わる。2023年より神山まるごと高専のプログラミング授業担当/1年生のクラスマネジャーとして活動。

ーー1年間走ったからこその感想、ありがとうございます。今話してくれたことを思うに至ったのはいつ頃からなんですか?

春田:私は学生たちが、神山町内で本当にのびのびと関係性を広げてくれたり自分たちで動き始めていることを知った時からですかね。スタッフがセットした場で、神山町民と交流するということでも良さそうなのに、自分たち自ら色々なところに顔を出し、お願いして、やりたいことを実現している。「え、そんなことやっているんだ!」っていう、驚きをたくさんもらいました。

鈴木:そうですね。それにやりたいことの質感もどんどん具体化していったなと思います。最初は「イベントをやりたい」とかが多かったです。それ自体は悪くないんですが、自分でフリーペーパーを作ろうとしたり、ロボットを作ったり。ちゃんとものづくりに向き合っているなと思います。色々な場数を経験して、どんどん洗練されてきている感じもあります。

まるごとファームクラブでの田植えの様子


FRCハワイ大会の様子

ーーインド研修も夏にはありましたね。そういった外を見ることも影響していると思いますか?

春田:インド研修の影響はすごく大きかったと思います。例えば、「自分ってどう見られているんだろう?」と、どうしても周りの目が気になる年代です。それが強かった子たちも、「私はそんなことをしにきたわけではない。やりたいことをやらなきゃ」って。自分の在り方というか、本当にやりたいことに向き合って帰ってきてくれました。

自分と向き合うのって、簡単なことではなくて、本当に彼らにとっては大変なことだったと思うのだけど、同級生たち同士声を掛け合いながら、前に進んだのかなって思います。

ーーそうだったんですね。今日ちょうど、寮に2年生となる学生たちが戻ってきていますが、チラと見てみて、どうでしたか?

鈴木:だいぶ顔つきが変わった気がします。新1年生のみんなと比べると特に、大人というか逞しい印象を持ちますよね。

一年前は、今の新1年生みたいな感じだったんだ・・1年間でこんなに変わるんだ・・って感じです。あとは、学生証に添付されている写真と学生の印象が全然違ったりしますね笑

ーーそんな成長著しい学生たちをみてみて、学校長としてはどうですか?

大蔵:僕はこの1年間を、毎日みていたわけではないのですが、本当に成長の速度が早い。学校に来るたびに来るたびに成長している、って感じで笑
学生とコミュニケーションを取るたびに、学生が使っている言葉とか、話し方とかが洗練されていく感じがしています。

1年間を振り返ると、「実体」になっているなっていう印象です。学校の立ち上げ・学校づくり段階からみてきた身としては、あの時描いていた青写真が実体になっている。形になっている。っていう印象を持っています。

とはいえ、本来は5学年、フルで学生がいるところに、今は1年生だけ。1年生だけの状態で、いわゆる完成された「高専」を求めるのは少し違うと思います。「β Mentality」を掲げておきながら、油断していると完成形を求めてしまうなと、自戒を込めて思います。そしてこれが、2年生、3年生と連なったらさらに面白いことになるんじゃないかなと思います。

ーー全体で見たら、学生同士の関係性は、クラスマネジャーにはどう映っていますか?

鈴木:私から見たら、家族的なつながりが強いなと思いました。寮生活が関連していると思うんですけど、それは感じます。お互いの面倒見が良いというか支え合っているというか。

春田:私も知真さんと同じ感覚で、何か凹んだ同級生がいても、見捨てないというか、見捨てられないって言う感覚なのかなと思います。学校が終わったらバイバイ。っていう生活ではなくて一緒に住んでいるからなのかな。

大蔵:私は高専に在籍した当時、寮にもいましたが、全員が寮に住んでいたわけではありませんでした。なので、ちょっと状況が違うかもしれないですが、イメージは会社の同僚。例えば目の前の課題に向けて役割分担して勉強して教えあうとか。チームでしたね。

ーーもしかしたら、本校が開校初年度ということもあるのかもしれないですね。今後、クラスマネジャーとしてこの学生たちとどう関わりたいですか?

鈴木:日々、課題が生まれています。学生のみなさんが課題をを自分ごととして拾うことがもっともっとできたら、いいなと思います。そのためのアプローチをしていきたいと思います。

春田:私は学生のみんなには、「1年間が終わった時に、一番楽しかったのは当事者になった人だよ」っていう話をしたんですね。ちょっと傍観をしていたり、当事者になれなかった学生たちはやっぱり、その時々を物足りない気持ちで過ごしていたと思います。「当事者になる」「自分ごと化する」って大変だけど、反面楽しいこともたくさんある。忙しさの中でも、一歩グッと踏み込んで当事者として頑張って欲しいなと思います。


ーーなるほど。けれど大人でも当事者って難しいですよね。これは大人にも共通することだと思うんですが、どうしたら飛び込めると思いますか?

春田:私は「損する覚悟」だと思います。もしかしたらなんのメリットもないかもしれない。そんなことたくさんある。それもありながら引き受けるって覚悟がいることだと思います。

これくらいだったらいけるかな、っていう自分なりの許容範囲、ブレーキの踏みどころがあると思います。私はクラスマネジャーとして安心してそこにブーンとみんながアクセルを踏めるようにしたいなと思います。

ーー そうですね。アクセルをしっかり踏み込んで欲しいですね。みなさん、入学式直前の忙しい中、ありがとうございました!