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神山まるごと高専、入学試験振り返りレポートを公開

まるごとnote編集チームです。
「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

先日、神山まるごと高専第1期生となる44名が確定しました。神山まるごと高専の初めての入試試験は、どのようなものだったのでしょうか。

2月3日(金)にメディア関係者向けに実施した入試概要説明会にて、内容や受験者の特徴について事務局長の松坂が話しました。本記事では、その内容をもとに、詳細やその意図についてさらに深掘りして聞きました。
※掲載内容は2022年度の入試であり、2023年度の内容や形式は変わる可能性があります。
※入学試験詳細ページはこちら

神山まるごと高専事務局長 松坂孝紀
東京大学教育学部を卒業後、人材教育企業アチーブメント株式会社に入社。マーケティング、人事、経営企画などを担当した後、2017年に子会社の取締役に就任。組織変革コンサルタントとして、企業や地方自治体の人づくり・組織づくりプロジェクトに従事。2021年、神山まるごと高専に参画。徳島県神山町に移住をし、学校づくりに邁進中。

Q. はじめに、初めての入学試験を振り返って、どうですか?

まず、新しいコンセプトの学校ということもあり、そのコンセプトに合う学生に入ってきてほしいという思いがあり、志向性や個性も含めたマッチングを総合的に判断する入試を行いました。

他の学校にない考え方で行われた入試だからこそ、入試の対策には苦労をかけたかもしれません。今回も、「どんな入試対策やったらいいですか?」という質問は驚くほどたくさんもらいました。

神山まるごと高専に入ってくる学生には、どこかに絶対的な正解があるという考え方、すなわち「正解探し」の習慣から脱却してもらいたいと思い、その思いを出題にも反映しています。

その要因として、「偏差値」というモノサシが皆さんの中に君臨していること大きいと思うんです。神山まるごと高専では一人ひとりの子どもの個性を尊重したいので、入試でも多様な個性を見れるものにするというのは自然な流れでした。

Q. 具体的には、どんな入試を行ったのですか?

5年間で作りたいモノや起こしたいコトを問う「課題レポート」や「面接」、実際にモノを作る「ワークショップ」などを通して、神山まるごと高専とのマッチ度を多面的に評価させていただきました。

その基盤にあるのは、求める学生像を記した「アドミッションポリシー」です。

神山まるごと高専のアドミッションポリシー

このアドミッションポリシーに基づいて、推薦入試と一般入試を実施し、他校との併願を可能としました。ともに、一次試験をオンラインと書類郵送で、二次試験を徳島県で実施し、それぞれの内容は下記の通りです。

中でも、特徴的なものをご紹介します。

特徴①「正解のない問い」にモノづくりの力で向き合う、課題レポート

課題レポートでは、下記の問いに取り組んでいただきました。

ここでは「1. モノづくりに興味や関心がある人」「4. 正解のない問いに対して、独自の解を出せる人」を中心に見させていただきました。

提出いただいたアイディアには、家族や友人の悩みに着眼したものから、社会課題の解決に貢献するものまで、様々なものがありました。

高い得点を獲得したレポートには、いずれも下記の二点で納得感が高いことが共通していました。

●自分の生活の中の気づきや自分の興味から、アイディアの着想を得ている(自分の半径5メートルに目を向けている)
●調査や思考が何度も繰り返されたことがわかり、独自の発想に辿り着いている

今回、課題レポートに取り組む期間は1ヶ月間でしたので、周囲の出来事や気になることを探究しているか、自分なりの仮説を立て、実証するためのアクションをとっているか、など、日頃からの習慣の有無が、点数の差に繋がる課題だったのかなと思いました。

特徴②「学力」以上に「学習力」を問う、学習プロセス

一般入試のみで国語・数学の学力試験を実施しましたが、その手前に「学習プロセス」という制度を取り入れました。

一般入試への出願が完了した人から順次、学力試験の出題範囲の一部を通知し、一部サンプル問題も公開しました。その後、通知した内容を参考に、各々学習を進めていただいた上で、オンライン学力試験に取り組んで頂きました。また、学力試験は、現行の中学校学習指導要領で定められた学習範囲から出題しました。

ここでは、「3. 情報を適切に処理する思考力がある人」「5. 必要な学習を続ける意欲があり、 学んだことを活かせる人」を見させていただきました。

5を重視する理由として、特に本校で学ぶテクノロジーの分野は、進化と変化の速度が非常に早い分野です。これからの社会において、常に学び続けること、時には学んだことを手放し、新しいことを取り込む力が必要だと考え、このような形式を取りました。

Q. 入試の中で、工夫した点はありますか?

推薦入試において、「誰でも推薦」という制度を取り入れました。学校関係者に限らず、本人や家族(2親等まで)以外の第三者であれば、最大2名の方から受験者を推薦いただけるという制度です。

その結果、全推薦入試受験者の約半数が学校関係者以外の方から推薦書をもらうという結果になりました。学校以外での活動の様子も含めて、多面的に個々人の強みを感じることができました。

Q. 受験者や保護者の反応はどうでしたか?

受験生からは、新しい形の試験に対して、下記のような好意的な声をたくさん頂き、素直に嬉しかったです。

「神山まるごと高専らしい入試で、楽しかった!」
「マッチング重視の入試とはこういうことか!と納得した。」
「入試に取り組む過程で、神山まるごと高専へ行きたいという気持ちがさらに高まっていった!」
「課題に取り組む中で、本当に自分がやりたいことに気づくことができた。」

他に、個人的に印象深かったのは、不合格だった学生の親御さんから「神山まるごと高専と出会ってから、子どもが本当に成長しました。今回はご縁はなかったですが、本当に感謝しています。」とメッセージを頂いたことです。入試のプロセスから、神山まるごと高専らしい成長環境を感じて頂けたのかなと思いました。

Q. どれぐらいの方が受験したのですか?倍率は?

推薦入試と一般入試をあわせて、のべ 399名の方に受験いただき、倍率は約9.07倍でした。うち、約7%が、高校1年生以上でした。

また、全国40都道府県および国外6か国の方から受験いただきました。

Q. 入学試験全体を振り返り、どうでしたか?

実際に入学が決定した学生の顔ぶれをみると、本当に個性豊かで、「マッチングを重視する」という方針に確かな手ごたえを感じています。
課題レポートにせよワークショップにせよ、絶対の正解はありませんし、対策にも正解はありません。実社会でも、神山まるごと高専入学後も山ほど向き合う「正解のない問い」に入試段階で向き合ってもらう中で、神山まるごと高専に入学した後の学校生活を感じてもらえたらと思っていました。回答にも素晴らしい個性を感じるものがたくさんありましたね。

しかし定員40名という限られた数しか受け入れられない中で、選抜をするのは心苦しさもありましたし、難しさもたくさんありました。改善点もありますし、もっとやりたかったこともありますが、そんな中でも、今年の学生募集活動全体を通し、2つの点で望ましい兆しがありました。

一般的な学力だけで選抜されていない入学試験。

学校での評定平均と本校の入試結果の相関図を見ると分かるように、必ずしも、評定平均いわゆる学力の高さが合格の条件になっていないことが分かります。

これは、冒頭で申し上げた「志向性や個性も含めたマッチングを総合的に判断する」入試を試みた結果がここに現れたのだと振り返っています。

合格者の男女比が半々に。

全国の国立高専の平均が女性22%(※)の中、合格者が男女半々になったことは、非常に喜ばしい結果でした。
※国立高等専門学校機構「学生に関するデータ」(令和3年5月1日)

これは、学生募集活動において、女性の起業家・エンジニア・デザイナーの起業家講師がイベントに登壇するなど、女性の方に興味を持っていただける施策に注力していた結果だと思います。

Q. 2期生の入試に向けて、どのような取り組みを実施する予定ですか?

育成型の学生募集」に注力をしていきたいと思います。今回の課題レポートのような「正解のない問い」に対して、「中学校で学ぶ内容とは違うので、最初は何から考えて良いか分からなかった」という声が受験生からありました。

本校の学生募集活動でのイベントでは、「正解のない問い」に慣れていただける機会を提供したいと思っています。

既に、2期生向け募集活動を始めており、「100年後の理想の街にあるもの」を紙で作るものづくりワークショップや、「月面にテーマパークを作るなら?」というお題に400字の作文を提出する冬休みの宿題企画などを実施しています。

「正解のない問い」を扱う体験授業を全国で展開

3月には、全国6都市で体験授業を行う「未来の学校 全国ツアー2023」を実施予定です。実際の教員や起業家講師が各地を訪れ、「テクノロジー」「デザイン」「起業家精神」に関する授業を行います。

これから進路を検討する全国の中学2年生にとって、新しい選択肢を考えるきっかけになったら良いなと思っています。

※ご予約はコチラから。(本校の公式LINEへの登録が必要です。)

いよいよ開校を迎え学校自体も進化していきますので、それに合わせて学生募集活動や入試もどんどん進化させていこうと思っています。


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