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【デロイト トーマツ コンサルティング】多様な領域に携わるデロイトだからこそ、志を持った学生と社会をつなぐ架け橋になれる/スカラーシップパートナーインタビュー

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

神山まるごと高専では、学費無償化を目的とした「スカラーシップパートナー」を立ち上げました。

企業からの拠出金および長期契約に基づく寄付により、奨学金を安定的に給付する日本初のスキームです。

神山まるごと高専の奨学金基金が完成 全学生を対象に、学費無償の私立学校が実現
https://kamiyama.ac.jp/news/0309-01/

このスカラーシップパートナーの1社が、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC)。パートナーとしての参画のみならず、DTC社員から寮スタッフを募るなど、同社とはすでに具体的な連携も始まっています。

そこでDTC代表執行役社長の佐瀬真人さんに、神山まるごと高専理事長の寺田親弘が、「DTCが神山まるごと高専に関心を寄せてくださっている理由」を聞きました。

実は二人はかつて、同時期に慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)に通っていた同窓生。「同じ学校出身」が持つ意味についても話が及びました。

点在していた縁がつながり、DTCと神山まるごと高専の新たな縁が生まれた

寺田:DTCさんにお声がけをしたのは、一言で言えばご縁でした。

最初のきっかけは「DTCが神山まるごと高専の話を聞きたいらしい」と、高校の同級生から連絡をもらったこと

この時点では、単に高専に興味を持ってくださっただけなのか、本気でスカラーシップパートナーへの参画を検討してくださっているのか、正直に申し上げればわからないわけです。そんな中で連絡を取り、実際にDTCさんとお会いしたら「これはかなり本気だな」とわかった。

そこからはもう、電光石火で話が進みました。2022年1月に最終プレゼンの機会をいただき、気合十分で訪問したのですが、なんと既に内々で意思決定をしてくださっていた。DTCさんのオフィスを出た瞬間には、「本当に決まったぞ!」と思わず叫びました(笑)

というのも、DTCさんはスカラーシップパートナーになってくださった第1号の企業さんだったんです。ファーストペンギンになっていただいたことに、心から感謝しています。

佐瀬:「日本から起業家を出したい」という神山まるごと高専創設の想いと、志がある学生に対して平等に門戸を開くという意思がセットになっていることに、僕は大きな感銘を受けました。それがスカラーシップパートナーになる決め手でもありましたね。

今の日本には、格差によってチャレンジしたいけれどできない人がいて、そういうポテンシャルがある人材をわれわれが生かし切れていない課題がある。その現状を打破するための、社会への大きな投げかけにもなると思いました。

寺田:ありがとうございます。

佐瀬:もう一つ大きかったのは、この取り組みを寺田さんがやっていることです。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長
佐瀬 真人
2000年4月DTC入社。自動車業界を始めとする製造業を中心に事業戦略立案、マーケティング戦略立案、技術戦略立案、組織・プロセス設計に関するコンサルティングに従事。デロイト トーマツ グループ、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド アジア太平洋地域のAutomotive(自動車)セクターリーダー、DTC最高戦略責任者(CSO)を歴任。2019年6月よりDTC 代表執行役社長(現職)。

実はSansanさんのCMをつくっているクリエイティブディレクターの岡康道さんが僕は好きで。寺田さんが自ら岡さんを口説き、SansanのCMを作ったという裏話を知っていたので、「寺田さんとは、価値観や美学のようなものが似ているのだろうな」と思っていました。

そんな期待があり、実際に寺田さんにお会いしたら、想定以上に近いものを感じて。しかも実は同じ慶應大学出身で、同じ時期にSFCに通っていたことまで判明しました。

寺田:びっくりでしたね。あの狭いキャンパスで一緒だったわけですから、間違いなくすれ違っていると思います。

佐瀬:そんな個人的な想いもあって、寺田さんがご自身の全てをかけて取り組んでいる神山まるごと高専のプロジェクトに、ぜひご一緒したいと思いましたね。

寺田:ありがとうございます。そうおっしゃっていただいて、僕はもう泣きそうです(笑)

今回、物事のご縁はこういう風につながるのだなとしみじみ思いました。クリエイティブディレクターの岡さんは、Sansanのブランドをつくってくださった恩人。残念ながら2020年にお亡くなりになってしまいましたが、こうやって岡さんによってご縁がつながったことに感動しています。

佐瀬:本当にご縁ですよね。DTCとしても、スカラーシップパートナーのお話は非常にタイミングがよかったんです。

コンサルティング業を営む当社にとって、人材育成は成長の全ての源ですから、以前から大学に対して寄付をしたり講座を行ったりするなど、さまざまな取り組みをやってきました。それをさらに加速させるべく、より体系立てて教育事業にコミットする体制が整ったところに、今回の神山まるごと高専のお話があったんです。

スカラーシップパートナー参画の背景にある、DTCの変化

寺田:今回、僕はDTCさんの印象が大きく変わったんですよ。

DTCさんは戦略コンサルティングファームであり、クライアント企業が利益を上げるためのサポートをする企業という印象が強くありました。失礼ながら言葉を選ばずに申し上げれば、金にならないことに対してコミットするイメージがなかったんです。

ところが、実際にお話を伺うと真逆で。社会的なことに対して、非常に意欲的に取り組まれていますよね。

佐瀬:その背景には、事業の変化が大きく影響しています。

従来の戦略コンサルティングファームは、クライアントに対してビジネス戦略のアドバイスをするのが主な役割でした。ところがだんだんとクライアントのニーズが変化し、今ではアドバイスのみならず、提案した構想を実装し、事業運営を行うところまでサポートしてほしいとおっしゃっていただくことが増えた。

そうした流れの中、ここ数年で当社のサービス内容にも変化があり、それに伴い求める人材も変わっています。これまでは四大卒の方の採用が中心でしたが、それこそ高専出身者の採用も増えています。

つまり、学校教育にDTCとして携わることは、この先当社のコンサルティングの在り方を広く理解していただく意味でも重要です。そんな事業の変化と高専への関心が高まったタイミングが、今回のお話と重なった。本当に、このタイミングしかなかったなと振り返って思います。

寺田:企業を持続させるには、利益を出すことが必要です。それに加えて、「どういう役割を社会で果たすのか」を企業は問われるようになりました。

つまり今のDTCさんは「企業の利益追求」と「企業の社会的な役割の追求」の双方をサポートしているのであり、同時にDTC自身もまた、その双方を体現する存在としてバージョンアップをしていかなければいけない。そんな想いが根底にあるのを感じましたね。

DTCが「学生と社会の架け橋」になることがもたらすメリット

寺田:DTCさんはスカラーシップパートナーとして参画するだけでなく、神山まるごと高専の寮スタッフとして社員の方が出向してくださるなど、すでにさまざまなご協力をいただいていますよね。

佐瀬:神山まるごと高専を一緒に育てていきたい想いが全てです。その手段の一つがお金ですが、支援のニーズはそれだけではないでしょうし、われわれができることは何でもやりたいと思っています。

寺田:お金を出し、それに対するリターンを求めるだけの姿勢をとることもできる中、DTCさんは「お金を出すだけでなく、さらにDTCは何ができるのか」を考えてくださっている。そんな前のめりな姿を見て、「21世紀型の企業」を地でいっているのを感じています。

佐瀬:あとは、コンサルティング会社としてなぜ神山まるごと高専を支援するのか、それによってDTCは何を得られるのか、一人一人の社員にできるだけ生で感じてもらいたい気持ちもあります。

約5000人のDTC社員全員が現地に行くわけにはいきませんが、一人でも多くの社員が実際に神山まるごと高専に関わることで、そこから熱意を伝え、輪を広げていければとイメージしています。社員がこういうコミュニティに触れる機会はそう多くありませんから、多様な価値観やものの見方を知る機会にしてほしいですね。

寺田:DTCの皆さんに神山まるごと高専の説明をする機会もいただきましたが、社員の皆さんが盛り上がっているのを見て、僕もワクワクしました。経営の意識と、社会の中での企業の有り様、そして、そこで働く人たちの想いがそれぞれつながり、線になっていくのが見えた気がします。

佐瀬:実際に、神山まるごと高専から「寮スタッフのポストがある」とご連絡をいただき、一部署に限って社内で募集をしたところ、髙石という社員から応募があり、早速出向が決まりました。

彼女はアメリカの大学で寮にいた経験があり、英語を話せない自分を寮母さんと寮の先輩が助けてくれたことがあるそうです。そんな原体験から、神山まるごと高専の子たちをサポートしたいという動機で応募してくれました。

募集は一部署限定でしたが、「なぜうちでは募集がないのか」と他部署から問い合わせがあったみたいですね。そのくらい、社員は神山まるごと高専に高い関心を寄せています。


寺田:髙石さんには、すでに1月から神山町に移住していただき、今は3月に行われる竣工式の学生向けの案内を担当いただいています。開校後はDTC社員として日中は本業をやりながら、それ以外の時間で寮の仕事をしていただく予定です。
(取材は2023年の1月末に実施)

僕はまだお会いできていないのですが、これからご一緒できることを楽しみにしています。

佐瀬:今はリモートで仕事ができる時代ですからね。神山町で寮スタッフをやりながらDTCの仕事をすることには、きっといろいろなメリットがあるのだと思います。

というのも、当社はクライアントに対してさまざまな経営支援をするわけですが、当然ながら次世代の若者は企業にとって大きなマーケット。企業がその世代を理解することは非常に重要であり、同時に難易度が高いことです。

そんな企業と社会をつなぐ役割を担っているわれわれが、若者である学生の皆さんが求めていることと、企業やその先にある社会をつなげられれば、当社にとってもクライアントにとってもメリットがあります。学生さんにとっても現実の社会を理解するきっかけになるでしょう。そんな橋渡しの役割を担えるといいなと思っています。

仲間と深い関係を築きながら、思う存分「自分」と向き合ってほしい

寺田:佐瀬さんご自身はどんな学生でしたか?

佐瀬:15歳の頃はサッカー部で、サッカー一筋でしたね。キャプテンもやっていましたし、千葉のユースにも選ばれて、それなりに上手い選手だったと思います。

ただ、高校に入ったらレベルが全然違って。この世界で自分はトップにはなれないと悟り、急激にサッカーへの熱を失ったのが高校1年生の終わりごろ。結局、そのままサッカーはやめました。

その後は親父が読書家で自宅が本だらけだったこともあり、文学や哲学に興味が向きましたね。何気なく手に取った村上春樹の『風の歌を聴け』に衝撃を受けたことを覚えています。

寺田:ビジネスに関心を持ち始めたのはいつごろですか?

佐瀬:だいぶ後です。「何を目指すのか」を探す旅のようなことを始めたのが高校1年生の頃であり、10代は一番深く自分と向き合った時期かもしれませんね。

そこで思考の深さが培われたような気がしますし、自分なりの信念や物事の考え方みたいなものも当時つくられたように思います。

寺田:「本当にこれでいいのだろうか」という自問自答は一生続くのでしょうけど、特に色濃いのが10代ですよね。野心的な子が集まる学校とはいえ、神山まるごと高専の学生たちもそういうモヤモヤは持っていると思います。

佐瀬:思う存分、悶々としてほしいですね。渦中にいる皆さんはつらいでしょうけど、大人の自分が今振り返れば、それは幸せな時間だったと思います。

社会人になってからの大変な局面は、あくまでも外との関係の中で起きるもの。「お前は誰なんだ?」みたいなことを深く考える期間として、10代の学生時代を過ごせるといいのでしょうね。

あとは、ぜひ一緒に学ぶ仲間たちと深い関係性を築いてください。

僕と寺田さんは同じ慶應SFC出身ですが、そこに集まる学生は多様ながら「世の中にインパクトを与えたい」という共通する何かを持っていたように思います。僕らは当時お互いのことを知らなかったけど、それでも同じ時代に同じ学校にいたというだけでシンパシーがある。

寺田:この共通点は大きいですよね。そう考えれば、神山まるごと高専は全寮制で一学年44人。5年間もの時間を一緒に過ごすわけですから、その濃さは相当なものです。

佐瀬:しかも、神山まるごと高専の学生には、本当の意味での多様性があります。

一般的には、ほとんどの人は地域の学校に進学し、家庭環境や経済状況によって進学先も限定されてしまうもの。どうしたって偏りが生じますが、神山まるごと高専は学費を完全無償化したことによって、誰にでも門戸が開かれています。

高専では珍しく男女比率も半々と聞いていますし、こんな学校はなかなかないのではないでしょうか。


寺田:学生たちの経済的な多様性を担保できたのは、DTCさんをはじめ、スカラーシップパートナーの皆さんのおかげです。「私立で学費無償」を一緒に実現いただいたこと、改めて本当にありがとうございます。

しかもDTCさんは第1号ですから、もう、僕は足を向けて眠れません……!

佐瀬:(笑)

寺田:DTCさんをはじめ、素晴らしいスカラーシップパートナーの皆さんとの取り組みができることは、学生の大きな特権です。

学生のみんなには、「自分はスカラーシップパートナーさんのサポートのもとで学んでいるのであり、出資元の企業の力を利用してやるぞ」という気持ちでいてもらえるといいなと。学内のカリキュラムで得たことを試すパートナーのような感覚で、「使い倒してやろう」くらいの想いを持ってほしいですね。

佐瀬:おっしゃる通りで、学生の皆さんはぜひわれわれをうまく使ってください。

お伝えした通り、われわれは志を持った学生の皆さんと社会をつなぐ架け橋になれると思っています。DTCが間に入ることで、「こういう社会にしていきたい」という皆さんの想いを社会に伝えるお手伝いができるはず。しかもDTCは携わっている領域が幅広いですから、大抵のところと接点は持てると思います。

ですから、どんなことを神山まるごと高専で感じ、何を学び、社会にどういう期待を持ち、何を実現したいのか、皆さんが感じたことをぜひ聞かせてください。

学生の皆さんには限りない可能性があって、世界を変えられるポテンシャルを一人一人が持っています。DTC奨学生のみならず、皆さんの生の声や想いを聞くのを楽しみにしています。

[取材・文・構成] 天野夏海 [撮影] 澤圭太

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