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#神山まるごと高専のヒト「自分の道を自分で決められるような教育がしたい」 鈴木佑奈

まるごとnote編集チームです。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てる、神山まるごと高専に関する情報を伝えています。

2023年4月に開校した神山まるごと高専。2期生の合格者も発表し、学校としてのあゆみを一歩一歩着実に進めています。この学校のリアルな動きをみなさんに発信していきたいと考え、今回から連載企画 #神山まるごと高専のヒト をスタートします。

この連載では、神山まるごと高専に関わるヒトをインタビュー形式や対談といった様々な形式でご紹介します。

第一弾は、保健体育担当スタッフ、鈴木佑奈。設立準備メンバーとして、いち早く神山にも移住し、この学校と共に走り続けている彼女の目から見た、神山まるごと高専とは。
ぜひご覧ください。

ーー最初に自己紹介をお願いします。

はじめまして、鈴木佑奈です。私自身、保健体育を授業として担当していますが「神山まるごと高専ってどんな授業してるの?」「そもそも高専の保健体育ってどんな感じ?」と質問を受けることも多いんですよね。なので神山まるごと高専の公式noteで「ヒト」に焦点を当てた企画がスタートするって聞いてめっちゃいいじゃん!と思ってました。
そしたらもれなく1人目になりました(笑)

北海道札幌市に生まれ、大学卒業後1年間小学校に勤務して特別支援教育に携わる。その後北海道を出てプロバスケットボールチームのマネージャーを経験し、教育の重要性を再認識した頃、国際バカロレア教育(IB)に出会い、大学院でIBを研究。2018年より公立の中高一貫校で保健体育の教員として教育のキャリアをリスタート。そこから神山まるごと高専に出会い、設立準備財団時から学生募集や地域連携に力を入れ、現在は保健体育の授業を担当しながら教務リーダーとして「社会と繋がる学校」「自分の道を自分で決める経験ができる教育」を目指して活動中。

ーー佑奈さんと神山まるごと高専の出会いに関して教えてください。

2021年に、とある学校の親しい先生に「先生の学校」というコミュニティのイベントに参加してみない?と誘われたのがきっかけです。当時のそのイベントは神山まるごと高専の理事メンバーでもある山川咲さんが登壇していて、神山まるごと高専を作りたいけど教員がいない状態だから「理想の学校を一緒に考えてほしい」という内容のイベントでした。
実はその前にも神山まるごと高専のHPは見たことがあって、当時は全然ピンと来てなかったし、なんだったら「すごくキラキラした学校出来るな」という印象。正直、高専がどんなものなのかも知らなかったんです。

ーー実際にイベントに参加したときはどんな感じでしたか?

登壇内容はあんまり覚えてなくて、ただ登壇後、知り合いと咲さんを含んだ複数名でブレイクアウトルームで会話したことは覚えてます。その時は当時の職場を辞めようとか考えてなかったけれど、その場のノリで「寮母と保健体育両方やれま~す」と話したことは覚えてます(笑)そのあと咲さんからはしっかりと「あとから連絡してね」と言われてイベントが終了しました(笑)

ーー結局、佑奈さんは開校する4月よりも前の準備財団の時から神山まるごと高専に関わっていましたよね?どんな流れで来てくれたんでしょうか。

「あとから連絡してね」と言われたあと、どちらが連絡したか覚えていないんですが、4月頃にぜひ面接を受けてほしいと言われました。履歴書を送って、面接、模擬授業を経て6月には最終面接となり東京のオフィスで理事メンバーと会って会話していました。
当時の中高一貫校も開校からいて、神山まるごと高専に転職するタイミング的に彼らの高校卒業を一緒に迎えることはできない。とても悩んだけど「それであれば彼らと同じように自分も新しい挑戦をしよう」と準備財団から関わることを決めました。あとは、準備財団から関わるとなると1年前倒しで神山へ移住することになるんです。それも理由でした。

ーー移住となると不安になりそうですが、なぜ前倒しで移住しようと思ったんですか?

転職することを迷っている時、「まずは神山町を訪れて考えてみよう」と行ってみたことがありました。その時に「本当に神山町に学校が出来るのか?」と、不安に思っている町民の方もいると聞いたのです。不安に思う町民の方に、開校前の段階でも学校のことをもっと知ってもらうため、教員になる自分が早めに移住した方が良いのではないか?と使命感を感じたことが大きいです。

ーー素敵ですね。いろいろな思いがある中で、神山まるごと高専に決めた決定打は何かあったんでしょうか。

教員をするにあたって「自己管理出来るようになる」「自分の行動を自分で選択出来るようになること」この2つの力を身につけられる教育をする、ということを大切にしていたんですが、自分の大切にしていたことが神山まるごと高専にマッチしていたことが決定打でした。

面接の時も「私が大切にしていることを授業でやった時、その授業は神山まるごと高専にマッチしていますか?目指している保健体育に合致しないのであれば、たとえ入っても貢献は出来ないと思う」とはっきり伝えていました。咲さんには「起業家精神を身に着ける上で、自己管理することや自分で取捨選択することはまさに必要なことで、あなたのやりたい保健体育は神山まるごと高専が求めているものとマッチしていると思うよ。」言われたんです。

ーー佑奈さんが大切にしている軸は何がきっかけで培われたんですか?

最初に伝えておくと、教育には関わりたいけど、先生になりたいと思っているわけではなかったんです。教員になる前はスポーツの世界にいたくらいなので。スポーツの世界にいるときに、たまたまIB教育を知って、自分が必要だと考えていた教育ってこれかもしれない!とピンときました。

今大切にしている軸もスポーツに携わってきたことがきっかけでつくられました。
スポーツ選手って自分で自分の道を決めた最たる職業だと思ってたんですが、そういう人たちにどうしてここに来たのか聞くと、意外にもそういう人ばかりではなかったんです。
そうなると、今までスポーツ中心の生活を送ってきていて、身体を壊してしまった時、セカンドキャリアを自分自身で描けないこともある。他にやりたいことが特にない、と。
こういうのを目の当たりにして、これって教育の弊害かもしれないなと思うこともありました。自分自身も部活中心の生活を送ってきた経験があり、自分で選択せず、思考停止になっていることもあったので、その状況になることも頷けます。
だからこそ、その環境要因にアプローチしたいと考えるようになりました。

だったら中学生や高校生くらいの年齢から「自分でこの道を決めたんだと、だから自分で責任をもって行くんだ。もしそこがあわなくてもまちがっていても、次を選ぶのは自分で、自分で選んだんだ」と思える方が幸せなんじゃないって思いました。このきっかけから「自己管理出来るようになる」「自分の行動を自分で選択出来るようになること」が私の教育軸になりました。

ーー実際、神山まるごと高専ではどんな授業を行ってますか?

後期は「自然との共生」「フォロワーシップ」「サバイバル」をキーワードにして、外に出る課外授業を意識して作っています。
例えばその3つのキーワード全てに関連するのが「フェーズフリー」。「フェーズフリー」というのは非常時と正常時の差をつけない、日常的に非常時で対応出来るようにしていたら、非常時も非常時ではないという考え方です。

保健体育としては神山町という環境に置いて、非常時にどんなことが起こるかということを想定して、日常的に非常を想定した行動がどうやって取れるかというのを町の中や、OFFICE(校舎)、HOME(寮)を観察してまわって想定してみる、ということをしました。例えば、ガスや電気が止まったとなった時、自分で火を起こせたら非常時も対応出来る、という発想です。この間、岳人の森で火おこしを練習していたのはそれが理由です。まさに「サバイバル」です。

ーーたしかに!火おこしをしてましたね。つい最近も野外活動されてなかったですか?

このあいだの野外活動では前回の火おこしのスキルを使って、電気とガスを使わずに料理をつくるというのをチームで体験してもらいました。
単純に「ご飯をつくる」だと「家庭科?」となってしまいますが、教科に捉われずにキーワードで繋ぐことで社会や日常と関連させ、なぜこの授業を行うのかを明確にしています。

ーー神山まるごと高専の目指す人物像に「モノをつくる力で、コトを起こす人」がありますが、そこは授業にどのように組み込まれていますか?

また私の大切にしている2つの軸の話に戻りますが、「自己管理できるようになる」「自分の行動を自分で選択出来る」これができることは「コトを起こす人」につながると思っています。その小さな選択の積み重ねと、自分の健康や心身を管理する方法を授業で学んでいくことは神山サークルでいう周りの部分に近いかなと思っています。

体育ってスポーツで考えると、「元々あるルールを守る」や「前ならえ」だったり指示されたものを行動するっていうようなルールを守る最たる教科だと思われているけど「むしろ一つ一つルールを作ることが出来るんだ」とか「安全に行動するために何が必要か考えて自分で考え実践する」ということはまさに体育の中で学べることなんですよね。健康もそうで「これを食べてこれを飲んでこの時間に寝たら健康になりますよ~」って言うのを鵜呑みにするのではなくて、「自分にとって健康とは何か?そのためになにをしたら良いのか?」と考えられるようになってほしい。そのために、情報から知識を構成し、計画して実践したことを踏まえて振り返って改善する。学生自身が自分の身体と心で理解していけるような授業を目指しています。そのために、私は管理する体育ではなくて、管理できるようになる体育をしたいと思っています。

ーー点と点が線になりました。直近、学生たちが防災チームを作ってたんです。
15歳くらいの学生たちが、自分で「本気の防災訓練やりたい」で思えるって何がきっかけ何だろうって思っていたけど、こうやって普段から自分たちを管理する、守るってことを考えてるからなのかもしれないですね。

確かに、学生たちは私の授業を少し頭かすめてくれたかもしれないけど、あれに関してはやっぱり自治寮を作るという観点で学生たちは動いてるんじゃないかなって思っています。
理想は、こういう考え方が授業からもっと派生するといいなと思ってます。
神山まるごと高専というと、Wednesday Nightのような外部から来た人が講師になることもあるから、そこをフューチャーされやすいと思うけど、私たち教員は「授業で学んだことは社会で生きる」、こういう前提で授業設計しないといけないと思うんです。

ーーなるほど。ちなみに日々の授業で悩みや葛藤してる部分ってありますか。

体育=スポーツの印象がぬぐい切れないことですかね。
学生たちから「もっと身体を動かしたい」って言われることもあります。何で?って聞くと「だって体育ってそういうものじゃない?」って言われる(笑)

確かに体力は何をするにも大事だと思うので、身体を動かすことは体育の授業の中でもどんどんやっていきますが、体育の授業の中だけで体力がつくと思っているのだとしたら、そこは反省ですね。授業の設計を見直します(笑)こうやってダイレクトにフィードバックをもらえるところも、この学校の良さだと思っています。

ーー最後に、今後やっていきたいことを教えてください。

やっていきたいこととしては、改めて神山まるごと高専のバリューを決めたいなと最近思ってます。
開校してからの1年はそれぞれの目指したい姿があり、バックグラウンドがある中で駆け抜けた1年で、それはそれで意味がある1年だったと思うんですが、これから先は「神山まるごと高専は学生や社会にどうあるべきか」をバリューとして定義して、このバリューに向けて全体が挑戦していく組織にしていきたいと考えてます。
そしてその挑戦をそれぞれが歓迎、賞賛していく組織にしていきたいですね。

あとは、スタッフ自身もアントレプレナーシップを養っていくことも大切にしていきたいです。あと、とにかくなんでも楽しむこと!学生と一緒にいろんなことに挑戦して、失敗して、いろんなことを楽しんでいきたいです。 
そして、私自身は神山まるごと高専らしい保健体育の授業も追及していきます!

佑奈さん、忙しい中、インタビューに答えてくれてありがとうございました!!

まるごとnoteでは、連載企画「神山まるごと高専のヒト」で、本校に関わる人に取材をしていきたいと思います。
今後もぜひお楽しみにしていてください。

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